薬機法・景品表示法 専門 薬剤師セールスコピーライター・コンサルタント
江良公宏
東京理科大学大学院 薬学研究科卒 薬学修士、薬剤師資格を保有。
薬事法管理者・コスメ薬事法管理者。
大手製薬会社にて新薬開発の研究職として4年間従事。その後独立し、薬事法広告のセミナー講師、化粧品OEM企画製造販売を経て、2015年に「薬機法・景品表示法の知識」「コピーライティング・マーケティングの知識」「薬剤師の知識」の3つを軸にした「薬機法コピーライティング」のノウハウを独自に研究・開発。『魅せる薬機法ライティング』を強みとしたランディングページ制作・コンテンツ制作を得意としている。
現在は制作のほか、『薬機法コピーライター養成講座』の主宰、薬機法コンサルティング業務、上場企業や大手広告代理店など向けの講演・社内研修も行っている。著書に『もう薬機法は怖くない!化粧品・健康食品の広告表現 きほんの「き」』、『もう薬機法は怖くない 第2弾!化粧品・健康食品のOK/NG表現集』がある。
CVR0.1%で月間売上数万円だった商品が、半年後には売上1,000万円に
江良さんが手がけられた商品で、実際に薬事法を守った上でのコピーライティングで成果がでたものとかはありますか?
そうですね、1個3,000円の美容クリームの案件なのですが、最初なかなか売れていなかったんですよ。コンバージョン率(CVR)が0.1%以下で1,000人に1人が買うくらいの商品で。
でもその商品ページのヘッドコピーを少し変更しただけで、半年後には1,000万円の売上が出るくらいになりました。。
ヘッドコピーを変えただけで、半年後に1,000万円!すごいですね。
2つの側面から確実に売れる販売戦略を手助け
今は企業向けに薬機法のセミナー講師としても活躍されていますが、それ以外ではどんなことをされてるんですか?
今はコンサルティングもコピーライティングも、どちらもやってますね。企業さんから「ライティングしたものをチェックしてください」という依頼が一番多いです。
書いたものが薬機法に違反していないかチェックしてください、ということですね。
そうです。ただこの段階でチェックだけしても、表面的になってしまうんですよね。
本当に商品を売りたいなら、商品設計やマーケティングの戦略から関わった方が効果が高くなります。
他には広告代理店の顧問として入ることもありますし、薬機法に関連して広告にアドバイスさせていただいたり、社内研修もやらせていただいています。
顧問となると商品の開発や販売戦略から一緒に考えていくんですか?
メーカーさんなら、成分をどうしたらいいかというとこから、どうしたら売れるかという企画までアドバイスしています。
外部の人間なので、メリットやデメリットを客観的な立場で言えるところもよさの一つだと思ってます。
そんな人なかなかいないですよね。
製品の成分に関しても話せるのは、薬剤師さんとか分かっている人だからこそできることだし。
そうですね。
チェックにしても、単に薬事法「だけ」のチェックではなくて、コピーライティング的なアドバイス・代替表現の提案もできるのがうちの強みです。
結構、「チェックだけしたら売れなくなって困ってます」というご相談も多いです。
「うちは大丈夫」と決めつけるのは危険
今は広告に関連して、守るべき法律やルールが増えてきていると感じるのですが、江良さんはどれだけの法律に対応されているのでしょうか?
薬機法、景品表示法、健康増進法、医療広告ガイドライン(医療法)、あはき法(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゆう師等に関する法律)、特定商取引法ですね。美容健康に関する法律で広告に関連するものはだいたい網羅しています。
正直、薬機法だけ意識してても他でダメになることもあるので、総合的にみないといけないんですよ。
では江良さん自身も薬機法への対応から、必要に迫られてどんどん対応する法律を広げていかれたということでしょうか?
確かに最初は薬機法からでしたが、広告を作るのに薬機法だけではダメなのは分かっていたので、最初から網羅するようにしてましたね。
そうなんですね。
広告運用だけじゃなくて法律自体も厳しくなってますよね。
医療広告ガイドラインが改正されたり、あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)のガイドライン検討中ですしね。
これからもっと厳しくなると思います。
そうなってくると、企業が自分で情報追うのも大変ですよね。事業もやってとなると時間もないですし。
正直そうですね。
ガイドラインの書き方が難しくて理解するのも大変だったりしますからね。
増えてきました。情報が早い会社なんかは先を見越してリスク管理していますね。
きちんと情報収集できている会社もあるんですね。
でも、実際にはそのように前もってリスクを管理できない会社がほとんどなのではないでしょうか。「通っていた広告が落ちた」などのタイミングで知る企業も多い気がします。
そうですね、私のビジネスって予防商品だなと最近思っていて。
すぐに必要とは思ってもらいにくいのですが、何かあってからでは遅いんですよね。
過去には、指摘を受けて広告をやめざるを得なくなってしまい、売上が4割落ちた企業もいるそうです。
広告からの売上が大きいとそのようになりますね。厳しくなっているという情報を知らなかったのでしょうか。
それもあるし、「うちは大丈夫だろう」って感じで広告の文言で攻めたらそうなったようです。
競合が攻めた文言で広告を出していると、負けられないし「これだけ攻めても大丈夫」と思ってしまうということもありますね。
それはよく言われます。「あそこが出してるからうちも大丈夫じゃない」とか。
でもそうではなくて、競合から告げ口されてしまったりもありますし。
あとは社会的な情勢もあって、一般消費者にも違法だと浸透してきているんです。
だから今まで以上に気を付けないと会社のブランドも失ってしまうことになりかねない。
会社のブランドに傷がつくのは1番嫌ですね。一時的に売れなくなるだけならまだいいけど、信用を失うのは一瞬で一時的なものではないですから。
薬機法違反で、最悪の場合逮捕の可能性も
昔だったら言い方を少し変更してしのげてたものが、今は文脈や画像の全体的なものからイメージできたらダメになってきてる印象があるんですけど、文章を変更するだけではダメなんですか?
薬機法や広告の審査が厳しくなってるのはわかっているので、みんな文字には配慮していると思うんです。
ただ現在では文章や画像の全体から総合的に判断されるので、文書だけではなくて画像にも配慮する必要がありますね。
そうなんですね。
実際に処分の対象になってしまうものには、どういうものがありますか?
特に多いのはダイエット関連のものですね。流行りの酵素ドリンクなど、ダイエット関連はかなり厳しくなってきています。
「水素水でがんが治る」と言ってしまって、逮捕になってしまった事例もありますね。
コピーライターが薬機法を知らない危険性とは
コピーライターや広告代理店が陥る危険性などありますか?
広告代理店や個人のコピーライターがが責任を問われるケースもあります。何も知らずに書いたものが薬機法などに引っかかったら最悪の場合、損害賠償とかもあり得ますね。
でも、そこまで気にしてるコピーライターとかって全然いないんです。知らずにやるのが一番怖いですよね。
例えば、スピード違反は知りませんでしたでは済まされないですよね。
法定速度100kmの道路があったとして、それを知っている人ならギリギリを攻めたいときは90km台で走ると思うんですよ。無難なとこでも80kmくらいで。
でも、何も知らない人は200kmとかで走っちゃう可能性ありますよね。
知っている人からしたら絶対に捕まるようなスピードで走ってしまう。
ギリギリを攻めるにしても、あらかじめ依頼主に説明できていればリスク管理ができますが、何も知らなかったら1発でダメになる可能性が高いってことですよね。
ライターと企業で上手くやり取りしていかないと、内容によっては危ないですね。
書くのも怖くなってきますね。薬機法に違反した場合、最初は注意が来るんでしょうか?
基本的にはそうですね。でも悪質な場合は、いきなり警察が来ることもあります。
これらの法律は、当初はあってないような法律だったんですよ。法律はあったけど罰則が無かったりして、実効性が無かったんです。
それが、実際に困った事例が多くなってきたから罰金制度ができるなどして大きく変わったりました。これからも、もっと厳しくなると思います。
それは一般ユーザーのリテラシーが上がってきたことも関係しているんですか?
それもあります。消費者センターへのクレームのジャンル1位が美容健康系らしいんです。
なので行政も動かざるを得なくなって・・・
薬機法は医薬品的な表現を禁止していて、景品表示法は虚偽や誇大広告はダメ。
基本的にはこの2つの大枠しかないので、正直運用で何ともなるのですが厳しくする方向にいっているんだと思います。
法律自体にどう書いちゃダメとかはないんですもんね。
誤解することがダメって書いてあったら、その誤解の度合いがどんどん厳しくなっているだけで。
薬機法コピーライティングの2つのポイント
いろいろお話を聞いて、もちろん法律を守らないといけないことは分かったんですが、守ると競合と似たような表現になってしまったりして、自社商品が売れないのではないでしょうか。
「守ったら売れない」っていうのはどこでも言われるんですけど、それは本当だけど嘘なんです。守っても売ることはできます。
法律を守った上で売れるコピーを書くにはどうしたらいいんでしょう?
薬機法コピーライティングをするうえで大切なポイントは2つあるんです。
1つ目は、実は画像なんです。言葉と画像で未来をイメージさせることが重要です。
ライティングばかりに目がいきがちなんですけど、薬機法コピーライティングの場合言葉単体、画像単体よりも、言葉と画像の効果の融合によって効果が最大化できるんです。
確かに、ユーザーにとってはコピーだけでなく画像も大きなインパクトがありますね。
そうなんです。なので、特にヘッド部分に関してはライターがそこまで考える必要があります。
コピーだけ考えて画像をデザイナーに任せてしまうと、いざ画像が出来てきた時に売れない・使えないヘッドコピーになってしまう可能性があります。
先ほど言ったように広告審査も総合的にみられるようになっているので、審査を通すという意味でもそうだし、ファーストビューの短いコピーと画像だけでユーザーにとって良い未来をイメージさせられるかが大切なんです。
ダイレクトすぎても薬機法に引っかかるので、言葉は濁しつつも画像で攻めるような感じです。
先ほど紹介した半年後に1,000万売り上げた商品のページは、最初ファーストビューの画像が商品パッケージだったんです。
これだと売れないので画像を変更してもらって、コピーを少し変更した。その変化だけで爆発的に売れたんですよね。
言葉と画像の組み合わせで売れない壁を超えられるんです。
パッケージでは「その商品でどうなれるのか」は想像できないですね。
ユーザーが見た瞬間に0.2秒くらいで、自分が商品を使った未来が見えるかどうか。
そこをどう訴求したらいいのかが重要になってきます。
そうなると、画像選定をデザイナーに任せたらいけないってことですか?
それかイメージと明確な意図を伝えて画像を選んでもらう必要があるとか?
うちの場合は、イメージ画像を渡したり、なければ画像イメージを具体的に細かく伝えています。
少ないと思います。
人間は視覚情報が1番入ってくるので、パッと見てまず目に入るのは画像なんです。
なので画像って非常に大事。画像1枚で大きく結果が変わります。
LP作るときに画像はライティングの不随物みたいになりがちだけど、実はそっちが要なんです。
文章に注視しがちだけど画像との組み合わせを計るのが大事なんですね。
一番大切なのは未来をイメージさせることと掛け合わせて効果を得るイメージをちゃんと持つこと。
薬機法が入ると書けないものが多いので、画像の選定と言葉の選定と両方に注力する必要があるんです。
これはライターさんは知っておくべきポイントですね。
連想ゲームで代替表現を大量生産
2つ目の大切なポイントは「言い換え」です。
例えば、便秘解消の商品だとスッキリなど言葉をたくさん使ってしまって、クリエイティブ的にもつまらなくなるんです。
なのでうちでは、ひたすら言い換えを考えます。
そこで1番よくやるのが連想ゲームですね。
そうです。
商品ワードから思いつくものをひたすら考える。
例えば、シワに関する商品だとしたら・・・
シワは女性にとっての悩み→シワは溝みたい→深いシワほど深い溝になる
シワといえば法令線→法令線はどこにできる?→口元→口元のシワ
この連想から「口元の深い悩み」といったコピーが出てくる。
これだとなんとなく法令線のことってわかりますよね。
連想ゲームで出たものを組み合わせていくことで、商品に合った一番良い表現が導き出せます。商品とユーザーで分かり合えるポイントが出てくるってことですね。
商品にもよります。
ただ、それがたくさん出せると代替表現を作れるんです。
たしかに。材料は出てきてるんですもんね。
いっぺんにダメにならなくて済みますね。
連想ゲームで出たものを文章にちりばめることで文章にも厚みが出てくるんです。
共起語があると全体でなんの話してるのかわかるってやつですね
コンテンツマーケティングとかだと、同じキーワードばっかり使うとコンテンツ的にもGoogle的にもダメになっちゃうじゃないですか。
そういった意味でも共起語をいっぱいかけるのは強みだと思います。
この2つが初歩的なポイントですね。
すぐに現場で意識して使えそうなノウハウですね。今日は商品の魅力を正しい方法で伝えるために、さまざまなヒントをいただきありがとうございました!
インタビューを終えて
「ユーザーに商品やサービスを届けたい!」
「でも薬機法が厳しすぎてコピーが作れない!」
と、薬機法の厳しさに悩まされている方は多くいらっしゃると思います。
でも、しっかりと理解して考えることでユーザーに刺さるコピーも作成できるということが分かりました。
連想ゲームを使ったコピーライティングのテクニックなどはすぐに使えると思います。皆さんもぜひ参考にしてみてくださいね。
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