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広告運用を自社で行うインハウス運用か代理店に任せるか悩んでいる方も多いでしょう。
「自社で運用できるのか」や「代理店に任せた方が良いのか」不安を抱えている方もいるかもしれません。 確かに、Web広告を自社で運用すると「スピーディーな運用」と「社内ノウハウの蓄積」などの様々なメリットがあります。
しかし、その一方で、急な担当者の辞職や、代理店に依頼した場合よりも広告運用のパフォーマンスが悪化する、社内リソースの不足などの失敗例も少なくないため、短期的なコスト削減だけで決めないことが重要です。
広告運用を自社で行う場合は、事業フェーズやリソース、自社の事業特性を十分に考慮したうえで判断する必要があります。
そこで本記事では、自社で運用するメリットとデメリットを代理店に依頼する場合との比較して解説をします。 また、広告運用を自社で行う場合には、どのような準備が必要かも合わせてお伝えします。
本記事を読めば、代理店に依頼した方が良いのか、インハウス運用(自社運用)にした方が良いのかが判断できます。
目次
インハウス運用か代理店運用、どちらが良いと断言できるものではない
インハウス運用と代理店運用のどちらにもメリット・デメリットがあり、必ずしもどちらが良いと言い切れるものではありません。
インハウス運用か代理店運用かを決めるためには、次の4点を確認したうえで判断すると良いでしょう。
1. インハウス運用と代理店運用のメリット・デメリットを知る
2. 広告運用を行う工程を把握する
3. インハウス運用が可能な組織体制を把握する
4. インハウス運用、代理店運用、インハウス運用と代理店運用の併用、インハウス支援運用の4つの選択肢から、方針を決める
それでは、順番に解説していきます。
インハウス運用か代理店運用かを決める4つのポイント
1. インハウス運用と代理店運用のメリット・デメリットを知る
▼インハウス運用のメリット
- 手数料(外注費)の削減ができる
- スピーディーな運用ができる
- 社内に広告運用のノウハウが蓄積される
手数料(外注費)の削減ができる
インハウス運用を検討している企業にとっての大きな目的の一つが、広告運用手数料の削減(外注費カット)ではないでしょうか。代理店運用の場合、業界の平均的で広告費の20%程かかることが多く、広告費に対して%で手数料がかかるので、広告出稿している金額が大きい企業ほど負担が重くなります。
広告運用の業務では、使用する金額が2倍になると2倍工数かかるといったように金額と業務量が比例していく訳ではないので、手数料の負担が重くなるほど自社で体制を整えたいと企業が考えることは自然な流れかもしれません。
スピーディーな運用ができる
広告代理店の運用担当者は、一般的に1社だけ運用しているということはなく、複数のクライアントの広告運用をしています。社内で今後の施策が決まり直ぐにやりたいと考えても、代理店の担当者に伝え実行してもらうまでにある程度の時間がかかります。代理店の担当者とのやり取りなどコミュニケーションコストもかかるでしょう。
インハウス運用に切り替えることで、社内で決めた施策を即実行、PDCAを素早く回して広告の成果を改善していくことが可能です。また顧客のことを一番理解しているのは、代理店ではなく事業会社の担当者の方でしょう。代理店は、広告の専門知識やクリエイティブなどの制作は優れていますが、業界知識、エンドユーザーの理解という面ではインハウス運用の方に利点があります。
社内に広告運用のノウハウが蓄積される
代理店運用の場合、広告運用のノウハウが社内に溜まらずWeb広告施策をする際に代理店依存になってしまいがちです。インハウス運用では、社内に広告運用のノウハウが蓄積されていくため、長期的な観点ではインハウス化にはメリットがあります。
一部、社外に外注したいと考えた際にも、社内に広告運用の分かる人材がいるかどうかで、有効に外注を活用できるかが変わってきます。
▼インハウス運用のデメリット
- 広告運用できる人材の確保、育てるのが大変
- 退職リスク(運用者の独人的なスキルになってしまう)
- 媒体側や他の業界の活用事例など、最新情報が受け取れない
広告運用できる人材の確保、育てるのが大変
Webマーケティングが分かる人材は、どこの企業でも不足しているケースが多く人材の確保にそれなりの費用がかかります。また一から育てる場合でも、一通りの施策を考え運用できるようになるまでに1年程度はかかるでしょう。
代理店のように複数の案件を運用し経験を積んでいくことも、事業会社では難しいため人材育成のハードルは高くなります。Web広告代理店は、日頃から広告運用に特化して培った経験があるからこそ、アカウントの設計から入稿、クリエイティブ作成、分析、成果レポートなど様々な業務を効率的に行えているということはあらかじめ理解しておきましょう。
退職リスク(運用者の独人的なスキルになってしまう)
社内の運用担当者が、退職してしまうリスクがあります。退職リスクに関しては代理店も同じですが、代理店では社内での人材育成の体制が整えられていたり、広告運用に関する情報を常に共有しています。そのため、自分の担当する案件以外の情報も常にキャッチアップできるので広告運用の品質を担保しやすいです。
一方、インハウス運用では代理店と比べて情報の共有が少なかったり、社内の案件数もすくないため運用者の属人的なスキルになりがちで、退職されると広告の成果が以前より悪くなるようなことが起こりえます。
媒体側や他の業界の活用事例など、最新情報が受け取れない
上記のデメリットと重なる部分にもなりますが、インハウス運用は媒体側からの情報が入りづらいというデメリットがあります。Web広告運用の世界は変化がとても早く、情報面でキャッチアップが遅れることは広告の成果にも繋がってきます。広告代理店であれば、媒体の担当者が付き最新情報を常にキャッチアップすることが可能です。
また代理店であれば、他業界での成功事例から横展開するなど広告の成果を改善したりなどできますが、他業界の情報が入ってこないため、広告運用トレンドや情報についてキャッチアップすることが難しくなります。
2. 広告運用を行う工程を把握する
次に、実際に広告運用を行ううえで必要な工程を把握していきます。 下記の表の通り、大きく5つの工程に分けられ、この工程は環境整備(事前準備)と日々の運用とに分類されます。
分類 | 順番 | 工程 | 詳細 |
環境整備 | 1 | 広告全体戦略の策定 | ・現在の課題の洗い出し ・広告運用の目的を明確化 ・広告戦略の策定 ・広告予算決め ・広告運用の方針決め など |
2 | 組織構築・マネジメント | ・担当者採用 ・役割分担 ・評価システム構築 ・担当者育成 など |
|
日々の運用 |
3 | 戦略・プランニング | ・運用メディアの選定 ・キーワードの選定 ・ターゲット設定 ・クリエイティブ訴求決め ・KPIの設定 ・タグの設置 ・入札戦略の設定 ・コンバージョンの設定 など |
4 | 広告アカウントの構築 | ・アカウント構築 ・クリエイティブ制作 ・入稿、確認作業のフロー構築 など |
|
5 | 広告運用 |
・入札調整 ※PDCA |
それでは、5つの工程を詳しく説明します。
広告全体戦略の策定
・現在の課題の洗い出し
・広告運用の目的を明確化
・広告戦略の策定 ・広告予算決め
・広告運用の方針決め
広告全体戦略の作成です。現状の課題の洗い出しをし、広告運用を行う目的を明確にします。 そのうえで、広告の戦略策定、予算決め、運用の方針を決めていきます。これは、広告運用を行う前の重要な準備段階の一つです。
組織構築・マネジメント
・担当者採用
・役割分担
・評価システム構築
・担当者育成 など
広告全体戦略が決まったら、担当者の採用、役割分担を決めていきます。もちろん採用して役割が決まったら終わりではなく、その後の育成システムや評価システムを構築します。社内に情報が溜まるように、属人化しない体制の構築も必要です。
戦略・プランニング
・ターゲット設定
・運用メディアの選定
まずは、ターゲット設定を行います。自社の商品やサービスを購入・利用して欲しい人を絞り込みます。このターゲット設定を行うことで、運用メディアや配信方法が明確になり、より効果的な広告運用ができます。
運用メディアは、たくさんの種類がありますが、代表的なものはリスティング広告、純広告、SNS広告、動画広告、アフィリエイト広告などです。
広告アカウントの構築
・キーワードの選定
・クリエイティブ訴求決め
・アカウント構築
・クリエイティブ制作
・タグの設置
・入札戦略の設定
・コンバージョンの設定
・入稿、確認作業のフロー構築
・KPIの設定 など
ここからが、広告運用の工程です。
運用メディアが決まったら、キーワード・クリエイティブの訴求を決めます。
次に、アカウントを構築し、広告アカウントの設定を進めていきます。
広告配信を開始するまでには、タグの設置やコンバージョンの設定を行い、入稿・確認作業のフローを決めてミスを防ぎます。 この広告配信で、求める成果やその成果に至るKPIも忘れずに設定しましょう。
広告運用
・入札調整
・広告文の見直し
・クリエイティブの見直し
・予算管理
※PDCA
運用の結果によっては「戦略・プランニング」から見直す必要がある
・分析、施策立案
・改善施策の実施
・レポーティング など
ここからは、日々の運用です。
初めに設定した内容でずっと広告配信を行うのではなく、改善が必要です。
まずは、運用結果から「行った施策は適切だったのか」「どのくらい改善できたのか」といった分析をします。そのうえで課題や改善点を洗い出し、配信方法やクリエイティブ変更など新たな施策を立て、実施します。
状況によっては、そもそも設定したターゲットがずれているというケースもあります。 運用の結果によっては「戦略・プランニング」から見直しましょう。
近年、広告運用の自動化が進んでいますが、他社との競争に勝っていくためには自動化だけに頼ることなく、このように、日々細かい調整と改善PDCAを回していくことが広告の最適化に繋がります。
3. インハウス運用が可能な組織体制を把握する
次にインハウス運用が可能な組織体制を把握していきましょう。 月間広告予算が100万円以上の場合の運用体制をご紹介します。
分類 | 工程 | 必要人員 |
環境整備 | 広告全体戦略の策定 | ・事業責任者 1名 (経営に関わるところ。ひとりで決めることは少なく、事業責任者と経営者や幹部で決められることが多い) |
組織構築・マネジメント | ・事業責任者 1名 ・マネージャー 1名 |
|
日々の運用 | 戦略・プランニング | ・プロジェクトマネージャー 1名 ・プランナー 1名 (専門家や経験者) |
広告カウントの構築 |
・オペレーター 1名 |
|
広告運用 |
・オペレーター 1名 |
広告全体戦略の策定
・事業責任者
経営に関わるところです。ここは、マーケティング責任者がひとりで決めることは少なく、事業責任者と経営者や幹部などの話し合いで決めます。
組織構築・マネジメント
・事業責任者 1名
・プロジェクトマネージャー 1名
実際に広告運用チームを統率する人はプロジェクトマネージャーひとりであるケースが多いですが、ひとりで解決できないこともあるため、少なくとも事業責任者との2名体制で行われます。
戦略・プランニング
・プロジェクトマネージャー 1名
・プランナー 1名
プロジェクトマネジャーやプランナーといった専門家や経験者が就くポジションです。
広告アカウントの構築
・オペレーター 1名
・ディレクター 1名
・デザイナー 1名
クリエイティブ作成は、ディレクターとデザイナーが担当し、広告アカウントの構築はオペレーターが担当します。
広告運用
・オペレーター 1名
・レポーティングの自動化 1名
・各データの分析、施策立案、改善事項の把握など 2~3名
毎日手作業でレポートを作成していると工数がかかり、改善施策を行う時間がありません。レポートの自動化は必須です。
また各データの分析や施策立案、改善事項の把握などは一人で行うよりも、専門家や経験者が複数人で行って様々な意見を出す方が施策の幅は広がります。
ただし、最小人数で行う場合は専門家・経験者として優秀な人間を採用し、配置することが重要です。そのため、自社の条件を満たす人員がいるのか、いない場合はいつまでに採用するのかといった部分もあわせて検討する必要があるでしょう。
4. 4つの選択肢から、方針を決める
ここまで必要なことを把握できたら、インハウス運用、代理店運用、インハウス運用と代理店運用の併用、インハウス支援運用の4つの選択肢から、方針を決めます。
人的リソースと配置、自社の状況を考慮したうえで判断をしましょう。
選択肢 | 詳細 | |
1 | インハウス運用 | 自社内で担当者を決めて(もしくは採用し)広告運用 |
2 | 代理店運用 | 自社外の専門家に広告運用を依頼 |
3 | インハウス運用と代理店運用の併用 | 複数の広告媒体を使用する場合、自社はFacebook広告、代理店はGoogle広告というように分ける |
4 | インハウス支援運用 | 自社運用を基本とし、代理店からインハウス支援のサポートを受ける |
インハウス運用と代理店運用は、その言葉の通りです。
インハウス運用と代理店運用の併用は、複数の広告媒体の運用を検討している場合に取り入れられる方法です。自社では、Facebook広告を運用し、代理店にはGoogle広告をというように依頼をします。
インハウス支援運用は、自社運用を基本とし、代理店からインハウス支援のサポートを受けるものです。未経験もしくは経験の浅い自社担当者を代理店に育成してもらいながら、自社の広告運用を行っていきます。
このインハウス支援内容は、企業によってサービス提供の内容が様々です。最終的に、自社でどのような体制を取りたいのかを明確にして、インハウス支援を行っている企業を決めるのが良いでしょう。
ちなみに、BtoB企業の広告運用の体制は、インハウスが5割という結果になっています。
▼BtoB企業の広告運用体制は「自社運用」と「代理店運用」はほぼ同程度
参照:BtoB企業のデジタルマーケティングにおけるWeb広告運用体制に関する調査
自社運用と代理店運用の併用で、部分的に自社運用をしている企業も多いという結果でした。 なお、自社運用の担当は、広告運用の経験者が6割以上という結果になり、採用時に広告運用の経験者を確保できるかが、自社運用を実施できるかどうかのポイントです。
インハウス運用が向いている企業
初めにもお伝えした通り、Web広告のインハウス(自社運用)代理店運用のどちらにもメリット・デメリットがあり、必ずしもどちらが良いと言い切れるものではありません。
しかし、あえてインハウスに向いている企業を挙げるとすれば、下記の点が当てはまる場合はインハウス(自社運用)を始めてみても良いかもしれません。
・少額で広告運用を考えている企業
・短期間での成果ではなく、長期目線で成果を追いかける企業
上述したような企業であれば、インハウス化がしやすく、成功するケースが多く見られます。
プロジェクトを素早く柔軟に進めていける体制がある企業であれば、インハウス(自社運用)も柔軟に変更・対応ができ、うまくいきやすいと言えます。
また、広告予算が少額の場合は、代理店に依頼したくても断られてしまうこともあります。それならば、初めからインハウスを選択し、長期目線で成果を伸ばしていく方が良いでしょう。
インハウスで成果を出すために押さえておきたいこと
経験よりも重要な「顧客理解」と「コミュニケーション力」
新しいマーケターを募集する場合、多くの人が「Web広告運用の経験」を優先条件として考えがちですが、実際に必要とされるのは「顧客理解力」と「コミュニケーション力」です。特に、「傾聴力」が必要不可欠です。
採用する前に、社内で商品・サービを利用してくれるユーザー層について話し合い、長期的に顧客と良好な関係を築ける人材を担当者にすることが重要です。
長期的な視点を持っている
Web広告運用の目的は「自社のブランド認知度を少しでも高め、できるだけ多くの顧客を獲得し、成約の機会につなげること」です。
もし目の前のタスクに追われて、目標を見失いそうになったら、「顧客はどういう人なのだろう」「ブランドの認知度を高めるためには何が必要だろう」という点に再度立ち戻り、長期的な視点を持ち続けましょう。
PDCAを回せる
インハウス運用では、PDCAを回し続けていくことが高い成果につながります。
しかしPDCAが回る分だけ、施策立案・報告の工数は膨れ上がっていきます。すると社内のWeb広告運用担当者に負荷が集中しすぎてしまい、思うように成果を出せないケースも出てきます。
そこで、事前に工数に関する見積をできるだけ正確に行い、人員配置など入念に準備しておくことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ご自身の会社にあった運用は、インハウス運用か代理店運用か明確になりましたか?
一言に「広告運用」と言っても、様々な工程があり、専任担当を一人立てておけば良いというものではないというのがご理解いただけたかと思います。
Web広告を自社で運用すると「スピーディーな運用」と「社内ノウハウの蓄積」などの様々なメリットがあります。しかし、その一方で、急な担当者の辞職や、代理店に依頼した場合よりも広告運用のパフォーマンスが劣化する、などの失敗例も少なくないため、短期的なコスト削減だけで決めないことが重要です。
広告運用を自社で行う場合は、事業フェーズやリソース、自社の事業特性を十分に考慮した上で判断する必要があります。
まだどちらにしようか、迷われている場合は
・一部代理店に依頼する
・インハウス支援サービスを受ける
などを視野に入れ、一度代理店に相談するのもひとつの方法です。
デジタルアスリートでも、Web広告担当者を育成しながら、企業内に広告運用の体制と仕組みを構築するサービスを行っています。
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