MCPとは?仕組みと活用例|Claude×e-Statで商圏調査

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関根諒亮

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この記事の要点
  1. MCPとは、Claudeなどが外部のデータやツールにつながるための共通規格です。Anthropic社が2024年11月に公開し、2025年12月にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈されました。政府統計のe-StatにつなぐMCPを自作し、Google Cloud上で動かしています。
  2. e-StatにつなぐMCPを使うと、チャットだけで、公的なデータの取得から、出店や商圏の見立てまで進められます。仮に墨田区で新規出店を考える場合を聞くと、Claudeは、人口285,038人(2025年10月1日現在)、25〜34歳が最も厚く、世帯の半数超が単身世帯という数字を示し、向いている業態の候補まで挙げました。見立てはClaudeの推定で、競合の数や家賃は入っていません。
  3. 一方、西新宿の例では、町丁目別の人口がe-Statから引けず、新宿区の公表資料で補いました。この半分うまくいかなかった例も、記事に載せています。作ったのはWeb広告コンサルタントで、コードはバイブコーディング(AIに書かせ、動くかどうかを人が確かめる進め方)で仕上げています。取れる数字と取れない数字の線引きも、最後に書きます。

デジタルアスリート株式会社では、Claudeを利用しています。Claudeは優秀で便利ですが、データの取得は、もっと楽にしたいと考えていました。そこで、MCPの活用に至りました。

作ったのは、店舗集客の広告で商圏を調べるための、e-StatにつなぐMCPです。この記事が答えるのは、Claudeにe-Statをつなぐと、商圏の調査が、チャットの中でどこまで進むのか、という問いです。公的なデータの取得と、生成AIの考察を、1つの会話の中で続けて行えるかを確かめました。うまくいった例と、半分うまくいかなかった例の両方を載せます。

ClaudeとMCPの説明から始めて、実際の例、MCPを使わない方法との比べ方、仕組み、注意点の順に書きます。

目次

Claudeとは?

Claudeとは、Anthropic社が開発したAIアシスタントです。文章の作成、資料やデータの分析、コードの生成などを、チャット形式の会話で依頼できます。外部のアプリと連携する機能(コネクタ)や、プログラム開発に特化したClaude Codeもあります。次に説明するMCPを公開したのも、Claudeを開発しているAnthropic社です。

Claudeの機能、料金、ChatGPTとの違いは、別の記事で解説しています。

MCP(Model Context Protocol)とは?

MCP(Model Context Protocol)とは、AIアプリが外部のデータやツールにつながるための共通規格です。AIは、学習したデータの範囲で答えます。最新の数字や、社外のデータには、Web検索などの別の手段が要ります。MCPは、データにつなぐ手段のうち、つなぎ方を一つにそろえたものです。

Anthropic社が2024年11月に公開し、2025年12月9日に、Linux Foundation傘下のAgentic AI Foundation(AAIF)へ寄贈されました。現在は、特定の1社の規格ではなく、複数の企業が参加する団体のもとで管理されています。ChatGPT、Gemini、Microsoft Copilot、Cursor、Visual Studio Codeなど、Claude以外のAIアプリも対応しています。(Anthropicの発表)

MCPが必要とされる理由

MCPが出る前は、AIアプリとつなぎ先の組み合わせごとに、接続を個別に作る必要がありました。AIアプリがN種類、つなぎ先がM種類あれば、N×M通りです。つなぎ先が1つ増えるたびに、AIアプリの数だけ接続が増えます。

MCPでは、AIアプリ側が共通の窓口(MCPクライアント)を持ち、つなぎ先側が共通の形式(MCPサーバー)で機能を出します。接続はN+M通りで済み、一度作ったMCPサーバーは、MCPに対応したどのAIアプリからも使えます。

MCPを通すと、会話の中で値を取りに行けます。取得した値に、調査時点や出典を付けて返す作りにもできます。

MCPの仕組み:ホスト・クライアント・サーバー

MCPは、3つの役割で動きます。

役割 内容 今回の構成
MCPホスト 利用者が操作するAIアプリ。Claude、Claude Code、Cursorなど Claude
MCPクライアント ホストの中にあり、サーバーとの通信を受け持つ部分 Claudeの中で動く
MCPサーバー 外部のデータやツールにつなぐ、小さなプログラム e-Stat MCP
MCPの仕組み:MCPホスト(Claude)からMCPサーバーを通して、e-Statを呼ぶ
MCPホスト、MCPクライアント、MCPサーバーの関係と、今回の構成

利用者がClaudeに普通の言葉で質問すると、Claudeが必要な操作を判断して、MCPサーバーを呼び出します。サーバーがe-Statから値を取り、Claudeが結果を回答にまとめます。どのサーバーのどの操作を使うかは、Claudeが選びます。

MCPサーバーが出せる機能は、次の3種類です。

  • ツール:操作の実行。統計表の検索、値の取得など
  • リソース:データの読み取り。ファイルやデータベースの中身など
  • プロンプト:特定の作業向けの、指示のひな型

今回のe-Stat MCPは、ツールが中心です。統計表の検索と、値の取得を、ツールとして渡しています。

MCPとAPIの違い

MCPは、APIの代わりではありません。MCPサーバーの内部では、各サービスのAPIを呼んでいます。e-Stat MCPなら、e-StatのAPIを呼ぶ部分を、MCPサーバーが受け持っています。

比べる点 MCP API
主な使い手 AI(Claudeなど) 人間の開発者(コードで呼び出す)
つなぎ方 MCPに対応したAIアプリなら共通 サービスごとに仕様が違う
関係 APIの上に置く、AI向けの共通の窓口 MCPサーバーの内部で使われる

MCPでできること

MCPでできることは、つなぐ先で決まります。Claudeには、既製のMCPサーバーを通じてつなげるサービスが用意されています。例えば、次のようなものです。

  • メールとカレンダー:Gmail、Googleカレンダー
  • 文書とデータ:Googleドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、Notion
  • チャットとタスク管理:Slack、Asana
  • デザイン:Canva、Figma

つなぐと、Claudeがこれらの中身を読んだり、操作を実行したりします。カレンダーの空き時間を調べて、日程を打診するメールの下書きを作る、といった作業が、Claudeの中で終わります。

既製のサーバーがないデータには、自分でMCPサーバーを作ってつなぎます。MCPサーバーは小さなプログラムで、作るための公式のSDK(開発用の部品一式)が公開されています。今回は、自分の調べ物に合わせて、自作を選びました。

今回検討したこと:商圏の調査を、e-Statの公的データで行う

店舗集客の広告では、配信エリアを決めるために、商圏の人口を調べる場面があります。商圏は、出店したあとも見直します。

  • 商圏を見直すたびに、統計の画面とExcelを行き来している
  • 新店の調査で、最新の年度の表を探すのに時間がかかる
  • AIに聞くと、数字の年度がバラバラで、信用しきれない

広告の提案資料に載せる数字は、どの調査の何年の値かまで言えないと使えません。そこで、国の統計を一か所にまとめた政府統計の総合窓口、e-Stat(イースタット)の数字を、出典つきで引くことにしました。出どころが明らかな、国の統計で確認や分析をするためです。

AIに検索させる方法も試しましたが、返ってくる数字の年度がバラバラになることがあり、信用しきれませんでした。

そこで、Claudeからe-Statを直接呼べるMCPにしました。表の選択と値の取得が、Claudeとのやり取りの中で終わります。取得した値には、統計名、調査時点、出典のURLが付いて返ります。筆者の実感では、画面の行き来が減り、リサーチを進めやすくなりました。

商圏調査の進め方:従来のやり方と、MCPを使うやり方の比較
従来は画面とExcelを行き来していた調査が、MCPではClaudeとの会話の中で進む

うまくいった例:墨田区の新規出店を、e-Statの数字で検討する

最初は、e-Statの数字だけで、最後まで進んだ例です。仮に、墨田区で新規店舗の出店を考えている場合を想定します(実在の広告主ではありません)。店舗集客の広告を出す前に、どんな人が住んでいて、どんな業態が合いそうかを知りたい場面です。

質問1:墨田区の人口と世帯を聞く

Claudeには、次のように聞きました。

> 墨田区の人口やデモグラフィック情報を教えて

Claudeの画面:墨田区の人口とデモグラフィック情報を聞いた結果
Claudeに「墨田区の人口やデモグラフィック情報を教えて」と聞いた画面(2026年11月5日)

Claudeは、墨田区の人口を285,038人(2025年10月1日現在)と答え、25〜34歳が最も厚く、世帯の半数超が単身世帯、と要約しました。人口の内訳は次のとおりです。

区分 人数 構成比
総人口(男140,015人・女145,023人) 285,038人 女性50.9%
15歳未満 26,461人 9.3%
15〜64歳 200,020人 70.2%
65歳以上(うち75歳以上) 58,431人(34,554人) 20.5%(12.1%)
外国人 16,403人 5.8%

年齢の山は、25〜29歳の29,452人(10.3%)と、30〜34歳の26,591人(9.3%)で、25〜39歳の合計は77,364人(27.1%)です。外国人は20〜24歳で2,014人で、この年齢の13%にあたります。

世帯は、次のとおりです(一般世帯158,272世帯)。

区分 世帯数 構成比 東京都
単独世帯 86,371 54.6% 53.0%
夫婦と子供の世帯 26,981 17.0% 20.1%
65歳以上の単独世帯 17,566 11.1% 11.4%

出典:総務省「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(2025年10月1日現在)の「男女、年齢(5歳階級)、国籍総数か日本人別人口」(e-Stat)と、「世帯の家族類型別一般世帯数」(e-Stat)、2026年11月5日取得。国勢調査の原数値で、年齢不詳の126人を含むため、3つの年齢区分の合計は、総人口と126人ずれます。東京都の構成比は、同じ表の東京都の値(一般世帯7,577,227世帯、単独世帯4,014,608世帯、夫婦と子供の世帯1,525,811世帯、65歳以上の単独世帯866,972世帯)から計算した値です。

このサービスは、政府統計総合窓口(e-Stat)のAPI機能を使用していますが、サービスの内容は国によって保証されたものではありません。

質問2:向いている店舗ビジネスを聞く

続けて、Claudeに、次のように聞きました。

> この人口帯ならどういった店舗ビジネスの出店に向いているかな

Claudeの画面:墨田区で向いている店舗ビジネスを聞いた結果
Claudeに「この人口帯ならどういった店舗ビジネスの出店に向いているかな」と聞いた画面(2026年11月5日)

Claudeは、単身・若年層向けの日常使いの店舗と、高齢者向けの医療・介護周辺が、相性の良い業態だと答えました。以下は、すべてClaudeの推定で、競合の数と家賃は入っていない、と書いています。

業態 根拠になる数字 注意点
美容・身だしなみ系(美容室・ネイル・まつげ・脱毛) 25〜39歳の女性が38,953人で、20〜30代の単身層が厚い 競合が多いため、事業所数での確認が先に要る
小型の食料品・惣菜・弁当・カフェ・ベーカリー 単独世帯が86,371世帯(54.6%)で、自炊より中食・外食に寄りやすい層 単価は上げにくく、立地(駅からの動線)で売上が決まる
小型ジム・パーソナルトレーニング 25〜34歳が56,043人で最も多い層 狭い商圏でも成立するが、会員獲得の広告費が前提になる
歯科・調剤薬局・整骨院・介護周辺 65歳以上が58,431人、うち75歳以上が34,554人、65歳以上の単独世帯が17,566世帯 医療は競合の施設数が多く、出店地の周辺数を数える必要がある
学習塾・習い事(個別指導・少人数) 15歳未満が26,461人 夫婦と子供の世帯は17.0%で東京都平均(20.1%)より低く、大型より小規模向き

外国人は5.8%(16,403人)で、20〜24歳に偏っています。留学生や若い就業者が多いとみられるため、食材・飲食・生活サービスの一部で需要が見込める、とClaudeは書いています。ただし、人口のデータだけでは国籍や生活様式までは分からない、とも書いています。逆に、ファミリー層を主に狙う大型店は、家族世帯の比率が低いため向きにくい、というのがClaudeの見立てです。

e-Statの数字の取得から、出店する業態の見立てまで、同じチャットの中で進みました。数字はe-Stat、解釈はClaudeの推定、という切り分けが、画面の中で見えます。Claudeは、競合の数や家賃が入っていないことも、自分で書いています。出店の判断には、競合の数、家賃、駅からの動線を、別に確かめる必要があります。

この結果の使い道

数字は、次のように使います。

  • 年齢構成と世帯構成 → 出店する業態の候補を絞り、広告で狙う層(年齢、単身かどうか)の見当をつける材料にする
  • 競合の数 → 事業所数などの別の統計で、候補の業態ごとに調べる

半分うまくいかなかった例:西新宿の商圏を調べる

次は、半分うまくいかなかった例です。例として、西新宿で歯科医院を営む広告主を想定します(実在の広告主ではありません)。広告の配信エリアを決めるために、商圏を調べる場面です。同じClaudeの中で、2つのことを聞きました。1つ目は、e-Statだけでは町丁目別の人口が出なかった場面です。2つ目は、そのあとに、e-Statの数字が効いた場面です。うまくいかなかった点も、そのまま載せます。

質問1:西新宿駅の近くの人口を聞く(町丁目別はe-Statから出なかった)

Claudeには、次のように聞きました。

> 西新宿駅近辺の人口は?e-Statを参考に調べてみて

返ってきた画面は次のとおりです。e-Stat MCPの呼び出しと、新宿区のPDFの読み取りが、1回の質問の中で行われています。町丁目別の人口の表が出ています。

Claudeの画面:西新宿駅近辺の人口を聞いた結果
Claudeに「西新宿駅近辺の人口は?e-Statを参考に調べてみて」と聞いた画面(2026年11月5日)

西新宿駅(東京メトロ丸ノ内線)の所在地は、新宿区西新宿6丁目です(交通エコモ財団「ecomo-rakuraku」)。Claudeは、その周辺の西新宿5〜8丁目を駅の近くと置き、人口を合計14,136人(住民基本台帳、2026年10月1日現在)と答えました。範囲の取り方で、数字は変わります。

町丁 人口(人) 65歳以上(人)
西新宿5丁目 5,022 650
西新宿6丁目 3,587 467
西新宿7丁目 2,302 403
西新宿8丁目 3,225 472
西新宿1〜8丁目の合計 23,504 3,579

65歳以上の合計は、新宿区の資料の「65歳以上」の欄を、1〜8丁目で足した3,579人です。Claudeの画面では3,134人と表示されていて、資料と合いませんでした。

合計には、5〜8丁目のほかに、1丁目(39人)、2丁目(6人)、3丁目(1,977人)、4丁目(7,346人)が入っています。Claudeは、1丁目と2丁目を、超高層ビル街で居住者がほぼいない、と説明しています。

西新宿の町丁目別の人口(1〜8丁目)
西新宿の町丁目別の人口。出典:新宿区の住民基本台帳(2026年10月1日現在)

ここで、e-Stat MCPで取れた数字と、取れなかった数字が分かれました。Claudeは、e-Statの国勢調査は市区町村までの表しか取れず、町丁目別の表は今のMCPでは出なかった、と書いています。取れたのは新宿区全体の人口で、「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(2025年10月1日現在)の361,357人でした。町丁目別の人口には、Claudeが、新宿区が公表している住民基本台帳の数字を使っています。止まらずに代わりの数字を出した点は、この場面のよい点です。一方で、住民基本台帳と国勢調査は、調査日と定義が違うため、足し引きは避けます。代わりの数字は、出典と年を人が確かめて使います。

出典:新宿区「住民基本台帳の町丁別年齢(5歳階級)別人口(日本人と外国人の合計)」(2026年10月1日現在)、2026年11月5日取得。総務省「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(2025年10月1日現在)、e-Stat、2026年11月5日取得。新宿区の資料と照合したところ、1〜8丁目の人口と、5〜8丁目の65歳以上の人数は、画面の数字と一致しました。画面の65歳以上の合計だけが、資料と合いませんでした。AIが返した数字も、出典と照合して使う必要があります。

質問2:現実的な商圏を聞く(e-Statの数字が効いた)

次に、商圏の絞り込みを聞きました。e-Stat MCPをつないだClaudeに、次のように聞いています。

> 西新宿駅に歯科を営んでいる場合に、現実的にどこまでが商圏になるかな。

Claudeの画面:西新宿駅の歯科の商圏を聞いた結果
Claudeに「西新宿駅に歯科を営んでいる場合に、現実的にどこまでが商圏になるかな。」と聞いた画面(2026年11月5日)

Claudeは、現実的な商圏を、駅から徒歩10分(約800m)圏が中心で、1次商圏は徒歩5分圏、とみています。これは、Claude自身が「筆者の推定」と書いていて、確定するには、実際の患者の住所を見る必要があります。理由は、西新宿は居住者が少なく、患者の中心が「住んでいる人」ではなく「通勤で来る人」になる可能性が高いためです。

この見立てに、e-Statの数字が使われています。

区分 値
新宿区の夜間人口(2020年) 349,385人
新宿区の昼間人口(2020年) 793,528人
うち区外に住む通勤・通学者 517,476人
新宿区の歯科診療所数(2021年6月) 380事業所
診療所1件当たりの夜間人口 約920人
診療所1件当たりの昼間人口 約2,090人

診療所1件当たりの人口は、349,385人÷380と、793,528人÷380の計算で、Claudeが出した値です。Claudeは、区全体の平均で、駅周辺の競合数ではない、と注記しています。昼間人口は2020年の国勢調査の値で、コロナ禍の在宅勤務が反映されています。

出典:新宿区「2020(令和2)年国勢調査 従業地・通学地集計結果 新宿区の概要」(昼間人口、夜間人口、区外から通う人の数。2020年10月1日現在)、総務省「令和3年経済センサス‐活動調査」産業(小分類)別全事業所数(歯科診療所。2021年6月1日現在、e-Stat)、2026年11月5日取得。診療所1件当たりの人数は、Claudeの計算値です。

Claudeは、商圏を3層に分けています(以下もClaudeの推定です)。

  • 1次(徒歩5分、約400m):駅直結・隣接ビルの勤務者と、西新宿5〜8丁目の居住者(約14,100人)。昼休み・退勤後の来院が中心
  • 2次(徒歩10分、約800m):西新宿の別の丁目の勤務者と居住者。超高層ビル群の就業者が最大のボリューム
  • 3次(通勤動線):丸ノ内線や新宿駅へ向かう動線上の人。居住地は遠くても、勤務先の近くで通う人

e-Statの数字の取得と、生成AIによる解釈が、1つの会話の中でそろいました。この例では、e-Statの数字(昼間人口、区外から通う人の数、診療所数)が、商圏の見立ての根拠になりました。質問1で、居住者だけでは足りないと分かったあとに、昼間人口の数字で補えた形です。ただし、商圏の見立ては推定です。確定には、実際の患者の住所などの来院データで確かめる必要があります。

この結果の使い道

数字は、次のように使います。

  • 町丁目別の居住人口 → 広告の配信エリア(どの町丁目まで入れるか)を決める材料にする
  • 昼間人口と、区外から通う人の数 → 居住地ベースか、勤務地ベースかという、配信エリアの考え方を決める材料にする
  • 歯科診療所数 → 競合の多さの目安にする(区全体の平均のため、駅周辺の数は別に調べる)

西新宿のように、オフィスや高層ビルが多い地域では、居住人口だけでは、商圏の姿を捉えきれません。

店舗の集客施策については、GoogleマップのAI口コミ要約とは?MEOが「数」から「中身」の勝負に変わった理由と対策で解説しています。

MCPを使わなくても、よいのでは?

ここまで読んで、MCPを使わなくても、e-Statの画面や、国のダッシュボードで足りるのでは、と思われたかもしれません。実際に、足りる場面もあります。方法ごとに、向く場面と手間を並べます。

方法 向く場面 手間・弱点
e-Statの画面で直接調べる 数字が1つで、1回きりの確認 表を探し、年度と範囲に合う表を選び、Excelに書き写す手間がある
AIに聞くだけ 口頭で、概数を確かめる 出典がe-Statの統計表とは限らない。年齢や世帯類型などの細かい切り口は、出ないことがある。数字の年度がバラバラになることがある
デジタル庁のダッシュボード(Japan Dashboard) 自治体どうしの比較、全体像の把握 画面の行き来が増え、複数のデータを取り出すと、ファイルの管理が増える(筆者の実感)。見られるのは、用意された指標の範囲
e-Stat MCP 数字を何度も、続けて調べる。解釈まで、同じ会話で進める 作る手間がある。取れない範囲がある。数字は人が確かめる

e-Statの画面で、直接調べる場合

e-Statは、出どころが明らかな、無料の統計です。数字が1つで、1回きりなら、画面で直接調べるほうが、手早く済みます。手間が出るのは、繰り返すときです。統計表の検索、最新の年度の表の選択、Excelへの書き写しが、毎回かかります。MCPにすると、表の選択と値の取得が、会話の中で終わります。

AIに聞くだけの場合

AIに聞く方法は、速く、概数の確認に向いています。ただ、e-Statの統計表が、出典として使われるとは限りません。

MCPをつなげていないClaudeに、「墨田区の人口は」と聞くと、次のように答えました。

MCPをつなげていないClaudeに「墨田区の人口は」と聞いた画面
MCPをつなげていないClaudeに「墨田区の人口は」と聞いた画面(2026年11月5日)

Claudeは、Web検索で見つけた墨田区の報道発表(2026年7月10日)を出典に、約29万人と答えました。住民基本台帳の数字で、e-Statの統計表は使われていません。Claude自身も、住民基本台帳ベースの数字なので、国勢調査の人口とは数千人単位でずれることがある、と書いています。MCPで取った285,038人(国勢調査、2025年10月1日現在)とは、調査の種類と時点が違います。

MCPがない場合の答えの出どころを、Claudeに聞くと、学習した知識から出典のない概数で答えるか、Web検索で見つかったページを出典にする、と説明しました。e-Statの統計表が拾われるのは、「令和7年国勢調査 墨田区 人口」のように、調査名まで指定したときが中心、とも説明しています。「墨田区の25〜29歳は何人」「単独世帯の比率」のような細かい切り口は、検索結果の本文に載っていないことが多く、検索だけでは出せません。その場合は、近い数字を別の統計から持ってくるか、取れなかったと答えることになります。

MCPで取りに行くと、取りに行く先がe-Statに決まり、統計表と調査時点、単位が決まります。年齢や世帯類型まで絞った値を、直接取れて、出典には、e-StatのURLと取得日を付けられます。提案資料やクライアントに出す数字は、この形のほうが、出典を示しやすく、定義のずれも防げます。口頭で概数を確かめるだけなら、普通に聞く方法でも足ります。その場合も、回答に出典と調査年が付いているかを確認してください。

デジタル庁のダッシュボードを使う場合

デジタル庁のダッシュボードは、内閣府とデジタル庁が公開している「Japan Dashboard(経済・財政・人口と暮らしに関するダッシュボード)」です。2025年7月に公開され、都道府県ごとの約700指標を見られます。2025年12月からは、市区町村ごとの約300指標も加わりました。地図、類似団体との比較、散布図、4つの指標の推移などで見られ、データカタログで複数の指標を一括でダウンロードできます。自治体どうしの比較に向いています。(デジタル庁のJapan Dashboard、市区町村ごとのダッシュボード)

筆者が手間と感じたのは、次の2点です。1つは、画面を行き来しながら見ることです。もう1つは、複数のデータを取り出して使うときに、ダウンロードしたファイルの管理が増えることです。また、見られるのは、用意された指標の範囲で、解釈は人が行います。市区町村ごとの指標は、公式の案内で、人口の分類が「人口、婚姻・出生等」とされています。この記事の墨田区の例のような、年齢5歳階級別の人口や、世帯の家族類型が、指標に含まれるかは、ダッシュボードの「指標のデータをみる」画面で確かめる必要があります。

MCPにも、手間と限界がある

MCPには、作る手間があります。私の場合は、バイブコーディングで作り、Google Cloudで動かしています。取れない範囲もあり、西新宿の例では、町丁目別の人口がe-Statから出ませんでした。数字の出典と年は、人が確かめる必要があります。

使い分けの目安

  • 口頭で、概数を確かめるだけ → AIに聞くだけ(出典と調査年を確認する)
  • 数字が1つで、1回きり → e-Statの画面
  • 自治体どうしの比較、全体像の把握 → Japan Dashboard
  • 数字を何度も、続けて調べ、解釈まで同じ会話で進めたい → e-Stat MCP

e-Stat MCPの仕組み

e-StatのAPIは、費用がかからずに使えます。利用登録とアプリケーションIDの取得が必要です。

サーバーは、Google Cloudの Cloud Run(プログラムを置いて、動かしておけるサービス)に置いています。Claudeに渡している操作の中心は、次の3つです。

  • 統計表の検索
  • 表の軸のコードの確認
  • 軸を絞った値の取得

よく使う表は台帳に登録しておくと、検索の先頭に出ます。社内の人だけが使える設定にしています。

e-Stat MCPの仕組み:ClaudeからMCPサーバー(Google Cloud Run)を通して、e-StatのAPIを呼ぶ
ClaudeからMCPサーバーを通して、e-Statを呼ぶ構成

Skillとは?何を書いたか

Skillとは、AIに特定の作業の手順や知識を教えておく、フォルダ単位の指示書です。Anthropic社が2025年10月にClaudeの機能として公開し、同年12月にAgent Skillsという公開の規格にしました。2026年10月には、MCPと同じAAIFへ寄贈されています。(Anthropicの発表、AI Businessの記事)MCPがデータを取りに行く手段なら、Skillは、取ってきたデータの扱い方を決めるものです。

e-Stat MCPのSkillには、どの統計表を使うかと、表ごとの地域コードの違いを書きました。年齢別の人口は国勢調査の人口等基本集計、世帯の家族類型は同じ調査の別の表、事業所数は経済センサス、というように、問いごとに表を決めてあります。表の選び方がぶれると、年度や範囲の違う数字を取り違えるためです。

バイブコーディングで作る際の注意点

運用の体制と、扱うデータの範囲

コードはバイブコーディングで仕上げました。Claude Codeに書かせ、動くかどうかを私が確かめる進め方です。公開範囲・認証・APIキーの置き場所といった基本の点は、私自身で点検してから運用し、技術面は、外部のコンサルタントからアドバイスをもらっています。

サーバーが扱うのは公開データだけで、クライアントの認証情報にはつながっていません。扱うデータが変わるときは、権限の見直しと、技術に詳しい人による確認が先に必要です。他の人が公開しているMCPサーバーを使うときも、提供元と、渡す権限の範囲を確かめてから使います。

数字の正しさは、人が確かめる

サーバーが動くことと、正しい数字が返ることは別でした。この記事の例にも、確かめて見つかった点があります。

  • 西新宿の画面で、65歳以上の合計が3,134人と出ていました。新宿区の資料を足し直すと、3,579人でした。AIの集計が、資料と合っていなかった例です。
  • 「墨田区の人口は」とMCPなしで聞くと、約29万人と返りました。住民基本台帳ベースの数字で、国勢調査の285,038人とは、調査の種類と時点が違います。
  • 診療所1件当たりの人数は、区全体の平均で、駅周辺の競合数ではありません。

e-Statでは、地域コードの体系も表によって違います。国勢調査と経済センサスの表では、新宿区の地域コードが13104で、国勢調査の墨田区は13107です。医療施設調査は独自の地域コードで、東京都が14です。こうした癖は、Skillに書いて、同じ失敗を繰り返さないようにしています。

使う側が数字と出典を見て確かめる前提で、この仕組みは成り立っています。出典はサーバーの返答に付くので、確認はその場でできます。

e-Statで取れるものと、取れないもの

公的な統計で土台を作れる場面は多くあります。一方で、足りない領域もあります。

今回の確認で取れたもの

  • 墨田区の人口、年齢構成、世帯構成、外国人の人数(令和7年国勢調査)
  • 新宿区全体の人口(令和7年国勢調査)。市区町村までの人口は、MCPで引けました
  • 新宿区の昼間人口、夜間人口、区外から通う通勤・通学者の数(2020年の国勢調査)
  • 新宿区の歯科診療所数(経済センサス。2021年6月)

今回のMCPでは取れなかったもの、古い年までのもの

  • 町丁目別の人口(国勢調査)。新宿区の住民基本台帳の公表資料で補いました
  • 駅周辺の競合数と家賃(取れたのは区全体の診療所数まで。墨田区の例の回答には、競合の数も家賃も入っていません。競合の数は、経済センサスの事業所数で別に調べられます)
  • 業界団体や民間調査会社が出す市場規模
  • 業態別の最新の販売額、SNSの利用率(APIでは取れないか、古い年までです)

足りない数字を補うときの考え方

町丁目別の集計(小地域集計)は、国勢調査の集計体系に含まれています。今回のMCPでは出ませんでした。公表の状況は、e-Statで確認してください。

自治体が公表する住民基本台帳の人口は、国勢調査と調査日や定義が違います。足し引きせず、年と範囲を並べて書きます。民間の調査を捨てる必要はなく、足していく形が現実的です。公的な統計で骨組みを作り、自治体の資料や民間の調査で補い、前提を資料に書き添える。MCPが省けるのは、表を探して値を取る手間までです。

まとめ:数字はMCPで取り、出どころと前提は人が確かめる

e-Stat MCPをつなぐと、数字を取る作業が、Claudeとのチャットの中に収まりました。墨田区の例では、人口とデモグラフィックの取得から、向いている業態の見立てまで、e-Statの数字だけで進みました。西新宿の例では、昼間人口と診療所数が商圏の見立てに効いた一方、町丁目別の人口は取れず、自治体の資料で代わりを探しました。

見立てはClaudeの推定で、数字には出典と年があります。MCPには数字を取る作業を任せ、出どころと前提を確かめる作業は人が持つ、という分担で進めます。扱うデータは公開データに絞っています。取った数字は、広告の配信エリアの見直しに使います。同じ悩みがある方は、公開データだけを扱う小さなMCPから試してみてください。

よくある質問

Q.MCPとは何ですか?

A.AIアプリが外部のデータやツールにつながるための共通規格です。

Anthropic社が2024年11月に公開し、2025年12月にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈されました。MCPサーバーを用意すると、Claudeが統計表の検索や値の取得を会話の中で呼び出せます。

Q.MCPとAPIは何が違いますか?

A.APIは、人間の開発者がコードで呼び出す窓口で、サービスごとに仕様が違います。

MCPは、AIが外部のツールやデータを使うための共通の窓口です。MCPサーバーの内部では、各サービスのAPIを呼んでいます。

Q.MCPとRAGは何が違いますか?

A.RAGは、回答を作るときに、文書のデータベースから関連する情報を探して参照する手法です。

MCPは、AIが外部のツールやデータに接続するための規格で、データの読み取りに加えて、操作の実行も含みます。両者は組み合わせて使えます。

Q.MCPは無料で使えますか?

A.規格そのものは公開されていて、利用に費用はかかりません。

Claudeなどのアプリの利用料と、自作したサーバーを動かす場所の費用は、別にかかります。

Q.Skillとは何ですか?

A.AIに特定の作業の手順や知識を教えておく、フォルダ単位の指示書です。

2025年12月に公開された規格で、2026年10月にMCPと同じAAIFへ寄贈されました。MCPがデータを取りに行く手段なら、Skillは、取ってきたデータの扱い方を決めるものです。

Q.e-Stat MCPでは、何が引けますか?

A.国勢調査などの人口と、昼間人口・夜間人口が、市区町村まで取れました。

経済センサスの診療所数も取れています。町丁目別の人口は、今回のMCPでは取れず、自治体の公表資料で補いました。業界団体や民間調査会社の市場規模は取れません。

Q.チャットだけで、商圏の分析はできますか?

A.公的なデータの取得と、生成AIによる見立て(商圏の絞り込み、出店に向く業態の候補)までは、チャットの中で進められました。

ただし、Claudeが示した内容は推定で、競合の数や家賃は入っていません。商圏の確定には、実際の患者の住所などのデータが要ります。数字の出典と年は、人が確かめます。

Q.新規出店の検討にも使えますか?

A.墨田区の例では、人口、年齢構成、世帯構成を取り、向いている業態の候補まで、Claudeが挙げました。

ただし、競合の数、家賃、駅からの動線は、別に確かめる必要があります。

Q.e-Statにないデータは、どうなりますか?

A.今回の例では、町丁目別の人口が、MCPではe-Statから出ませんでした。

Claudeは、新宿区が公表している住民基本台帳の数字で、代わりに答えました。調査日や定義が違うため、国勢調査の数字とは足し引きせず、出典と年を人が確かめて使います。

Q.MCPをつなげずに、普通にClaudeへ人口を聞くと、e-Statのデータは使われますか?

A.使われるとは限りません。

学習した知識から出典のない概数で答えるか、Web検索で見つかったページを出典にします。e-Statの統計表が拾われるのは、調査名まで指定したときが中心です。年齢や世帯類型などの細かい数字は、検索だけでは出ないことがあります。例えば「墨田区の人口は」と聞くと、墨田区の報道発表(住民基本台帳)を出典に、約29万人と答えました。国勢調査の285,038人とは、調査の種類と時点が違います。MCPなら、統計表と調査時点が決まり、e-StatのURLを出典に付けて返します。

Q.MCPを使わず、e-Statの画面で調べるのと、何が違いますか?

A.数字が1つで、1回きりなら、e-Statの画面で足ります。

繰り返し調べるときは、表の検索、年度の確認、Excelへの書き写しが、毎回かかります。MCPは、表の選択と値の取得を、Claudeとの会話の中で行い、統計名、調査時点、出典のURLを付けて返します。

Q.デジタル庁のダッシュボードでは、足りませんか?

A.自治体どうしの比較や、全体像の把握には向いています。

2025年12月から、市区町村ごとの約300指標も見られます。ただし、見られるのは、用意された指標の範囲です。必要な数字が指標にあるかを、先に確かめてください。MCPは、e-Statの統計表から、必要な数字を、会話の中で取ります。

Q.非エンジニアでもMCPサーバーは作れますか?

A.動くサーバーは作れました。

ただし、動くことと正しい数字が返ることは別なので、出典を見て確かめる運用が前提になります。

Q.e-StatのAPIは無料で使えますか?

A.費用はかかりません。

利用登録をして、アプリケーションIDを取得する必要があります。e-StatのAPI機能を使ったサービスを公開するときは、利用者が見られる場所にクレジット表示をお願いされます。

Writer

関根諒亮 記事一覧

デジタルアスリート株式会社
経営企画部 エキスパート

2018年4月、デジタルアスリート株式会社(旧:株式会社リスティングプラス)へ入社

在籍9年目 キャリア初期からGoogle、MetaなどのWeb広告やLP制作、LPOに従事。

大手広告代理店への出向やマネジメント経験を経て現在は生成AIを活用した社内/外支援に従事。

経営企画部の一員として、生成AIを活用した生産性向上や顧客のマーケティング支援に勤しむ。

趣味は映画鑑賞、Manchester Unitedの試合観戦。好きな色は赤色。

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