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- MCPとは、Claudeなどが外部のデータやツールにつながるための共通規格です。Anthropic社が2024年11月に公開し、2025年12月にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈されました。政府統計のe-StatにつなぐMCPを自作し、Google Cloud上で動かしています。
- e-StatにつなぐMCPを使うと、チャットだけで、公的なデータの取得から、出店や商圏の見立てまで進められます。仮に墨田区で新規出店を考える場合を聞くと、Claudeは、人口285,038人(2025年10月1日現在)、25〜34歳が最も厚く、世帯の半数超が単身世帯という数字を示し、向いている業態の候補まで挙げました。見立てはClaudeの推定で、競合の数や家賃は入っていません。
- 一方、西新宿の例では、町丁目別の人口がe-Statから引けず、新宿区の公表資料で補いました。この半分うまくいかなかった例も、記事に載せています。作ったのはWeb広告コンサルタントで、コードはバイブコーディング(AIに書かせ、動くかどうかを人が確かめる進め方)で仕上げています。取れる数字と取れない数字の線引きも、最後に書きます。
デジタルアスリート株式会社では、Claudeを利用しています。Claudeは優秀で便利ですが、データの取得は、もっと楽にしたいと考えていました。そこで、MCPの活用に至りました。
作ったのは、店舗集客の広告で商圏を調べるための、e-StatにつなぐMCPです。この記事が答えるのは、Claudeにe-Statをつなぐと、商圏の調査が、チャットの中でどこまで進むのか、という問いです。公的なデータの取得と、生成AIの考察を、1つの会話の中で続けて行えるかを確かめました。うまくいった例と、半分うまくいかなかった例の両方を載せます。
ClaudeとMCPの説明から始めて、実際の例、MCPを使わない方法との比べ方、仕組み、注意点の順に書きます。
目次
Claudeとは?
Claudeとは、Anthropic社が開発したAIアシスタントです。文章の作成、資料やデータの分析、コードの生成などを、チャット形式の会話で依頼できます。外部のアプリと連携する機能(コネクタ)や、プログラム開発に特化したClaude Codeもあります。次に説明するMCPを公開したのも、Claudeを開発しているAnthropic社です。
Claudeの機能、料金、ChatGPTとの違いは、別の記事で解説しています。
MCP(Model Context Protocol)とは?
MCP(Model Context Protocol)とは、AIアプリが外部のデータやツールにつながるための共通規格です。AIは、学習したデータの範囲で答えます。最新の数字や、社外のデータには、Web検索などの別の手段が要ります。MCPは、データにつなぐ手段のうち、つなぎ方を一つにそろえたものです。
Anthropic社が2024年11月に公開し、2025年12月9日に、Linux Foundation傘下のAgentic AI Foundation(AAIF)へ寄贈されました。現在は、特定の1社の規格ではなく、複数の企業が参加する団体のもとで管理されています。ChatGPT、Gemini、Microsoft Copilot、Cursor、Visual Studio Codeなど、Claude以外のAIアプリも対応しています。(Anthropicの発表)
MCPが必要とされる理由
MCPが出る前は、AIアプリとつなぎ先の組み合わせごとに、接続を個別に作る必要がありました。AIアプリがN種類、つなぎ先がM種類あれば、N×M通りです。つなぎ先が1つ増えるたびに、AIアプリの数だけ接続が増えます。
MCPでは、AIアプリ側が共通の窓口(MCPクライアント)を持ち、つなぎ先側が共通の形式(MCPサーバー)で機能を出します。接続はN+M通りで済み、一度作ったMCPサーバーは、MCPに対応したどのAIアプリからも使えます。
MCPを通すと、会話の中で値を取りに行けます。取得した値に、調査時点や出典を付けて返す作りにもできます。
MCPの仕組み:ホスト・クライアント・サーバー
MCPは、3つの役割で動きます。
| 役割 | 内容 | 今回の構成 |
|---|---|---|
| MCPホスト | 利用者が操作するAIアプリ。Claude、Claude Code、Cursorなど | Claude |
| MCPクライアント | ホストの中にあり、サーバーとの通信を受け持つ部分 | Claudeの中で動く |
| MCPサーバー | 外部のデータやツールにつなぐ、小さなプログラム | e-Stat MCP |

利用者がClaudeに普通の言葉で質問すると、Claudeが必要な操作を判断して、MCPサーバーを呼び出します。サーバーがe-Statから値を取り、Claudeが結果を回答にまとめます。どのサーバーのどの操作を使うかは、Claudeが選びます。
MCPサーバーが出せる機能は、次の3種類です。
- ツール:操作の実行。統計表の検索、値の取得など
- リソース:データの読み取り。ファイルやデータベースの中身など
- プロンプト:特定の作業向けの、指示のひな型
今回のe-Stat MCPは、ツールが中心です。統計表の検索と、値の取得を、ツールとして渡しています。
MCPとAPIの違い
MCPは、APIの代わりではありません。MCPサーバーの内部では、各サービスのAPIを呼んでいます。e-Stat MCPなら、e-StatのAPIを呼ぶ部分を、MCPサーバーが受け持っています。
| 比べる点 | MCP | API |
|---|---|---|
| 主な使い手 | AI(Claudeなど) | 人間の開発者(コードで呼び出す) |
| つなぎ方 | MCPに対応したAIアプリなら共通 | サービスごとに仕様が違う |
| 関係 | APIの上に置く、AI向けの共通の窓口 | MCPサーバーの内部で使われる |
MCPでできること
MCPでできることは、つなぐ先で決まります。Claudeには、既製のMCPサーバーを通じてつなげるサービスが用意されています。例えば、次のようなものです。
- メールとカレンダー:Gmail、Googleカレンダー
- 文書とデータ:Googleドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、Notion
- チャットとタスク管理:Slack、Asana
- デザイン:Canva、Figma
つなぐと、Claudeがこれらの中身を読んだり、操作を実行したりします。カレンダーの空き時間を調べて、日程を打診するメールの下書きを作る、といった作業が、Claudeの中で終わります。
既製のサーバーがないデータには、自分でMCPサーバーを作ってつなぎます。MCPサーバーは小さなプログラムで、作るための公式のSDK(開発用の部品一式)が公開されています。今回は、自分の調べ物に合わせて、自作を選びました。
今回検討したこと:商圏の調査を、e-Statの公的データで行う
店舗集客の広告では、配信エリアを決めるために、商圏の人口を調べる場面があります。商圏は、出店したあとも見直します。
- 商圏を見直すたびに、統計の画面とExcelを行き来している
- 新店の調査で、最新の年度の表を探すのに時間がかかる
- AIに聞くと、数字の年度がバラバラで、信用しきれない
広告の提案資料に載せる数字は、どの調査の何年の値かまで言えないと使えません。そこで、国の統計を一か所にまとめた政府統計の総合窓口、e-Stat(イースタット)の数字を、出典つきで引くことにしました。出どころが明らかな、国の統計で確認や分析をするためです。
AIに検索させる方法も試しましたが、返ってくる数字の年度がバラバラになることがあり、信用しきれませんでした。
そこで、Claudeからe-Statを直接呼べるMCPにしました。表の選択と値の取得が、Claudeとのやり取りの中で終わります。取得した値には、統計名、調査時点、出典のURLが付いて返ります。筆者の実感では、画面の行き来が減り、リサーチを進めやすくなりました。

うまくいった例:墨田区の新規出店を、e-Statの数字で検討する
最初は、e-Statの数字だけで、最後まで進んだ例です。仮に、墨田区で新規店舗の出店を考えている場合を想定します(実在の広告主ではありません)。店舗集客の広告を出す前に、どんな人が住んでいて、どんな業態が合いそうかを知りたい場面です。
質問1:墨田区の人口と世帯を聞く
Claudeには、次のように聞きました。
> 墨田区の人口やデモグラフィック情報を教えて

Claudeは、墨田区の人口を285,038人(2025年10月1日現在)と答え、25〜34歳が最も厚く、世帯の半数超が単身世帯、と要約しました。人口の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 総人口(男140,015人・女145,023人) | 285,038人 | 女性50.9% |
| 15歳未満 | 26,461人 | 9.3% |
| 15〜64歳 | 200,020人 | 70.2% |
| 65歳以上(うち75歳以上) | 58,431人(34,554人) | 20.5%(12.1%) |
| 外国人 | 16,403人 | 5.8% |
年齢の山は、25〜29歳の29,452人(10.3%)と、30〜34歳の26,591人(9.3%)で、25〜39歳の合計は77,364人(27.1%)です。外国人は20〜24歳で2,014人で、この年齢の13%にあたります。
世帯は、次のとおりです(一般世帯158,272世帯)。
| 区分 | 世帯数 | 構成比 | 東京都 |
|---|---|---|---|
| 単独世帯 | 86,371 | 54.6% | 53.0% |
| 夫婦と子供の世帯 | 26,981 | 17.0% | 20.1% |
| 65歳以上の単独世帯 | 17,566 | 11.1% | 11.4% |
出典:総務省「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(2025年10月1日現在)の「男女、年齢(5歳階級)、国籍総数か日本人別人口」(e-Stat)と、「世帯の家族類型別一般世帯数」(e-Stat)、2026年11月5日取得。国勢調査の原数値で、年齢不詳の126人を含むため、3つの年齢区分の合計は、総人口と126人ずれます。東京都の構成比は、同じ表の東京都の値(一般世帯7,577,227世帯、単独世帯4,014,608世帯、夫婦と子供の世帯1,525,811世帯、65歳以上の単独世帯866,972世帯)から計算した値です。
このサービスは、政府統計総合窓口(e-Stat)のAPI機能を使用していますが、サービスの内容は国によって保証されたものではありません。
質問2:向いている店舗ビジネスを聞く
続けて、Claudeに、次のように聞きました。
> この人口帯ならどういった店舗ビジネスの出店に向いているかな

Claudeは、単身・若年層向けの日常使いの店舗と、高齢者向けの医療・介護周辺が、相性の良い業態だと答えました。以下は、すべてClaudeの推定で、競合の数と家賃は入っていない、と書いています。
| 業態 | 根拠になる数字 | 注意点 |
|---|---|---|
| 美容・身だしなみ系(美容室・ネイル・まつげ・脱毛) | 25〜39歳の女性が38,953人で、20〜30代の単身層が厚い | 競合が多いため、事業所数での確認が先に要る |
| 小型の食料品・惣菜・弁当・カフェ・ベーカリー | 単独世帯が86,371世帯(54.6%)で、自炊より中食・外食に寄りやすい層 | 単価は上げにくく、立地(駅からの動線)で売上が決まる |
| 小型ジム・パーソナルトレーニング | 25〜34歳が56,043人で最も多い層 | 狭い商圏でも成立するが、会員獲得の広告費が前提になる |
| 歯科・調剤薬局・整骨院・介護周辺 | 65歳以上が58,431人、うち75歳以上が34,554人、65歳以上の単独世帯が17,566世帯 | 医療は競合の施設数が多く、出店地の周辺数を数える必要がある |
| 学習塾・習い事(個別指導・少人数) | 15歳未満が26,461人 | 夫婦と子供の世帯は17.0%で東京都平均(20.1%)より低く、大型より小規模向き |
外国人は5.8%(16,403人)で、20〜24歳に偏っています。留学生や若い就業者が多いとみられるため、食材・飲食・生活サービスの一部で需要が見込める、とClaudeは書いています。ただし、人口のデータだけでは国籍や生活様式までは分からない、とも書いています。逆に、ファミリー層を主に狙う大型店は、家族世帯の比率が低いため向きにくい、というのがClaudeの見立てです。
e-Statの数字の取得から、出店する業態の見立てまで、同じチャットの中で進みました。数字はe-Stat、解釈はClaudeの推定、という切り分けが、画面の中で見えます。Claudeは、競合の数や家賃が入っていないことも、自分で書いています。出店の判断には、競合の数、家賃、駅からの動線を、別に確かめる必要があります。
この結果の使い道
数字は、次のように使います。
- 年齢構成と世帯構成 → 出店する業態の候補を絞り、広告で狙う層(年齢、単身かどうか)の見当をつける材料にする
- 競合の数 → 事業所数などの別の統計で、候補の業態ごとに調べる
半分うまくいかなかった例:西新宿の商圏を調べる
次は、半分うまくいかなかった例です。例として、西新宿で歯科医院を営む広告主を想定します(実在の広告主ではありません)。広告の配信エリアを決めるために、商圏を調べる場面です。同じClaudeの中で、2つのことを聞きました。1つ目は、e-Statだけでは町丁目別の人口が出なかった場面です。2つ目は、そのあとに、e-Statの数字が効いた場面です。うまくいかなかった点も、そのまま載せます。
質問1:西新宿駅の近くの人口を聞く(町丁目別はe-Statから出なかった)
Claudeには、次のように聞きました。
> 西新宿駅近辺の人口は?e-Statを参考に調べてみて
返ってきた画面は次のとおりです。e-Stat MCPの呼び出しと、新宿区のPDFの読み取りが、1回の質問の中で行われています。町丁目別の人口の表が出ています。

西新宿駅(東京メトロ丸ノ内線)の所在地は、新宿区西新宿6丁目です(交通エコモ財団「ecomo-rakuraku」)。Claudeは、その周辺の西新宿5〜8丁目を駅の近くと置き、人口を合計14,136人(住民基本台帳、2026年10月1日現在)と答えました。範囲の取り方で、数字は変わります。
| 町丁 | 人口(人) | 65歳以上(人) |
|---|---|---|
| 西新宿5丁目 | 5,022 | 650 |
| 西新宿6丁目 | 3,587 | 467 |
| 西新宿7丁目 | 2,302 | 403 |
| 西新宿8丁目 | 3,225 | 472 |
| 西新宿1〜8丁目の合計 | 23,504 | 3,579 |
65歳以上の合計は、新宿区の資料の「65歳以上」の欄を、1〜8丁目で足した3,579人です。Claudeの画面では3,134人と表示されていて、資料と合いませんでした。
合計には、5〜8丁目のほかに、1丁目(39人)、2丁目(6人)、3丁目(1,977人)、4丁目(7,346人)が入っています。Claudeは、1丁目と2丁目を、超高層ビル街で居住者がほぼいない、と説明しています。

ここで、e-Stat MCPで取れた数字と、取れなかった数字が分かれました。Claudeは、e-Statの国勢調査は市区町村までの表しか取れず、町丁目別の表は今のMCPでは出なかった、と書いています。取れたのは新宿区全体の人口で、「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(2025年10月1日現在)の361,357人でした。町丁目別の人口には、Claudeが、新宿区が公表している住民基本台帳の数字を使っています。止まらずに代わりの数字を出した点は、この場面のよい点です。一方で、住民基本台帳と国勢調査は、調査日と定義が違うため、足し引きは避けます。代わりの数字は、出典と年を人が確かめて使います。
出典:新宿区「住民基本台帳の町丁別年齢(5歳階級)別人口(日本人と外国人の合計)」(2026年10月1日現在)、2026年11月5日取得。総務省「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(2025年10月1日現在)、e-Stat、2026年11月5日取得。新宿区の資料と照合したところ、1〜8丁目の人口と、5〜8丁目の65歳以上の人数は、画面の数字と一致しました。画面の65歳以上の合計だけが、資料と合いませんでした。AIが返した数字も、出典と照合して使う必要があります。
質問2:現実的な商圏を聞く(e-Statの数字が効いた)
次に、商圏の絞り込みを聞きました。e-Stat MCPをつないだClaudeに、次のように聞いています。
> 西新宿駅に歯科を営んでいる場合に、現実的にどこまでが商圏になるかな。

Claudeは、現実的な商圏を、駅から徒歩10分(約800m)圏が中心で、1次商圏は徒歩5分圏、とみています。これは、Claude自身が「筆者の推定」と書いていて、確定するには、実際の患者の住所を見る必要があります。理由は、西新宿は居住者が少なく、患者の中心が「住んでいる人」ではなく「通勤で来る人」になる可能性が高いためです。
この見立てに、e-Statの数字が使われています。
| 区分 | 値 |
|---|---|
| 新宿区の夜間人口(2020年) | 349,385人 |
| 新宿区の昼間人口(2020年) | 793,528人 |
| うち区外に住む通勤・通学者 | 517,476人 |
| 新宿区の歯科診療所数(2021年6月) | 380事業所 |
| 診療所1件当たりの夜間人口 | 約920人 |
| 診療所1件当たりの昼間人口 | 約2,090人 |
診療所1件当たりの人口は、349,385人÷380と、793,528人÷380の計算で、Claudeが出した値です。Claudeは、区全体の平均で、駅周辺の競合数ではない、と注記しています。昼間人口は2020年の国勢調査の値で、コロナ禍の在宅勤務が反映されています。
出典:新宿区「2020(令和2)年国勢調査 従業地・通学地集計結果 新宿区の概要」(昼間人口、夜間人口、区外から通う人の数。2020年10月1日現在)、総務省「令和3年経済センサス‐活動調査」産業(小分類)別全事業所数(歯科診療所。2021年6月1日現在、e-Stat)、2026年11月5日取得。診療所1件当たりの人数は、Claudeの計算値です。
Claudeは、商圏を3層に分けています(以下もClaudeの推定です)。
- 1次(徒歩5分、約400m):駅直結・隣接ビルの勤務者と、西新宿5〜8丁目の居住者(約14,100人)。昼休み・退勤後の来院が中心
- 2次(徒歩10分、約800m):西新宿の別の丁目の勤務者と居住者。超高層ビル群の就業者が最大のボリューム
- 3次(通勤動線):丸ノ内線や新宿駅へ向かう動線上の人。居住地は遠くても、勤務先の近くで通う人
e-Statの数字の取得と、生成AIによる解釈が、1つの会話の中でそろいました。この例では、e-Statの数字(昼間人口、区外から通う人の数、診療所数)が、商圏の見立ての根拠になりました。質問1で、居住者だけでは足りないと分かったあとに、昼間人口の数字で補えた形です。ただし、商圏の見立ては推定です。確定には、実際の患者の住所などの来院データで確かめる必要があります。
この結果の使い道
数字は、次のように使います。
- 町丁目別の居住人口 → 広告の配信エリア(どの町丁目まで入れるか)を決める材料にする
- 昼間人口と、区外から通う人の数 → 居住地ベースか、勤務地ベースかという、配信エリアの考え方を決める材料にする
- 歯科診療所数 → 競合の多さの目安にする(区全体の平均のため、駅周辺の数は別に調べる)
西新宿のように、オフィスや高層ビルが多い地域では、居住人口だけでは、商圏の姿を捉えきれません。
店舗の集客施策については、GoogleマップのAI口コミ要約とは?MEOが「数」から「中身」の勝負に変わった理由と対策で解説しています。
MCPを使わなくても、よいのでは?
ここまで読んで、MCPを使わなくても、e-Statの画面や、国のダッシュボードで足りるのでは、と思われたかもしれません。実際に、足りる場面もあります。方法ごとに、向く場面と手間を並べます。
| 方法 | 向く場面 | 手間・弱点 |
|---|---|---|
| e-Statの画面で直接調べる | 数字が1つで、1回きりの確認 | 表を探し、年度と範囲に合う表を選び、Excelに書き写す手間がある |
| AIに聞くだけ | 口頭で、概数を確かめる | 出典がe-Statの統計表とは限らない。年齢や世帯類型などの細かい切り口は、出ないことがある。数字の年度がバラバラになることがある |
| デジタル庁のダッシュボード(Japan Dashboard) | 自治体どうしの比較、全体像の把握 | 画面の行き来が増え、複数のデータを取り出すと、ファイルの管理が増える(筆者の実感)。見られるのは、用意された指標の範囲 |
| e-Stat MCP | 数字を何度も、続けて調べる。解釈まで、同じ会話で進める | 作る手間がある。取れない範囲がある。数字は人が確かめる |
e-Statの画面で、直接調べる場合
e-Statは、出どころが明らかな、無料の統計です。数字が1つで、1回きりなら、画面で直接調べるほうが、手早く済みます。手間が出るのは、繰り返すときです。統計表の検索、最新の年度の表の選択、Excelへの書き写しが、毎回かかります。MCPにすると、表の選択と値の取得が、会話の中で終わります。
AIに聞くだけの場合
AIに聞く方法は、速く、概数の確認に向いています。ただ、e-Statの統計表が、出典として使われるとは限りません。
MCPをつなげていないClaudeに、「墨田区の人口は」と聞くと、次のように答えました。

Claudeは、Web検索で見つけた墨田区の報道発表(2026年7月10日)を出典に、約29万人と答えました。住民基本台帳の数字で、e-Statの統計表は使われていません。Claude自身も、住民基本台帳ベースの数字なので、国勢調査の人口とは数千人単位でずれることがある、と書いています。MCPで取った285,038人(国勢調査、2025年10月1日現在)とは、調査の種類と時点が違います。
MCPがない場合の答えの出どころを、Claudeに聞くと、学習した知識から出典のない概数で答えるか、Web検索で見つかったページを出典にする、と説明しました。e-Statの統計表が拾われるのは、「令和7年国勢調査 墨田区 人口」のように、調査名まで指定したときが中心、とも説明しています。「墨田区の25〜29歳は何人」「単独世帯の比率」のような細かい切り口は、検索結果の本文に載っていないことが多く、検索だけでは出せません。その場合は、近い数字を別の統計から持ってくるか、取れなかったと答えることになります。
MCPで取りに行くと、取りに行く先がe-Statに決まり、統計表と調査時点、単位が決まります。年齢や世帯類型まで絞った値を、直接取れて、出典には、e-StatのURLと取得日を付けられます。提案資料やクライアントに出す数字は、この形のほうが、出典を示しやすく、定義のずれも防げます。口頭で概数を確かめるだけなら、普通に聞く方法でも足ります。その場合も、回答に出典と調査年が付いているかを確認してください。
デジタル庁のダッシュボードを使う場合
デジタル庁のダッシュボードは、内閣府とデジタル庁が公開している「Japan Dashboard(経済・財政・人口と暮らしに関するダッシュボード)」です。2025年7月に公開され、都道府県ごとの約700指標を見られます。2025年12月からは、市区町村ごとの約300指標も加わりました。地図、類似団体との比較、散布図、4つの指標の推移などで見られ、データカタログで複数の指標を一括でダウンロードできます。自治体どうしの比較に向いています。(デジタル庁のJapan Dashboard、市区町村ごとのダッシュボード)
筆者が手間と感じたのは、次の2点です。1つは、画面を行き来しながら見ることです。もう1つは、複数のデータを取り出して使うときに、ダウンロードしたファイルの管理が増えることです。また、見られるのは、用意された指標の範囲で、解釈は人が行います。市区町村ごとの指標は、公式の案内で、人口の分類が「人口、婚姻・出生等」とされています。この記事の墨田区の例のような、年齢5歳階級別の人口や、世帯の家族類型が、指標に含まれるかは、ダッシュボードの「指標のデータをみる」画面で確かめる必要があります。
MCPにも、手間と限界がある
MCPには、作る手間があります。私の場合は、バイブコーディングで作り、Google Cloudで動かしています。取れない範囲もあり、西新宿の例では、町丁目別の人口がe-Statから出ませんでした。数字の出典と年は、人が確かめる必要があります。
使い分けの目安
- 口頭で、概数を確かめるだけ → AIに聞くだけ(出典と調査年を確認する)
- 数字が1つで、1回きり → e-Statの画面
- 自治体どうしの比較、全体像の把握 → Japan Dashboard
- 数字を何度も、続けて調べ、解釈まで同じ会話で進めたい → e-Stat MCP
e-Stat MCPの仕組み
e-StatのAPIは、費用がかからずに使えます。利用登録とアプリケーションIDの取得が必要です。
サーバーは、Google Cloudの Cloud Run(プログラムを置いて、動かしておけるサービス)に置いています。Claudeに渡している操作の中心は、次の3つです。
- 統計表の検索
- 表の軸のコードの確認
- 軸を絞った値の取得
よく使う表は台帳に登録しておくと、検索の先頭に出ます。社内の人だけが使える設定にしています。

Skillとは?何を書いたか
Skillとは、AIに特定の作業の手順や知識を教えておく、フォルダ単位の指示書です。Anthropic社が2025年10月にClaudeの機能として公開し、同年12月にAgent Skillsという公開の規格にしました。2026年10月には、MCPと同じAAIFへ寄贈されています。(Anthropicの発表、AI Businessの記事)MCPがデータを取りに行く手段なら、Skillは、取ってきたデータの扱い方を決めるものです。
e-Stat MCPのSkillには、どの統計表を使うかと、表ごとの地域コードの違いを書きました。年齢別の人口は国勢調査の人口等基本集計、世帯の家族類型は同じ調査の別の表、事業所数は経済センサス、というように、問いごとに表を決めてあります。表の選び方がぶれると、年度や範囲の違う数字を取り違えるためです。
バイブコーディングで作る際の注意点
運用の体制と、扱うデータの範囲
コードはバイブコーディングで仕上げました。Claude Codeに書かせ、動くかどうかを私が確かめる進め方です。公開範囲・認証・APIキーの置き場所といった基本の点は、私自身で点検してから運用し、技術面は、外部のコンサルタントからアドバイスをもらっています。
サーバーが扱うのは公開データだけで、クライアントの認証情報にはつながっていません。扱うデータが変わるときは、権限の見直しと、技術に詳しい人による確認が先に必要です。他の人が公開しているMCPサーバーを使うときも、提供元と、渡す権限の範囲を確かめてから使います。
数字の正しさは、人が確かめる
サーバーが動くことと、正しい数字が返ることは別でした。この記事の例にも、確かめて見つかった点があります。
- 西新宿の画面で、65歳以上の合計が3,134人と出ていました。新宿区の資料を足し直すと、3,579人でした。AIの集計が、資料と合っていなかった例です。
- 「墨田区の人口は」とMCPなしで聞くと、約29万人と返りました。住民基本台帳ベースの数字で、国勢調査の285,038人とは、調査の種類と時点が違います。
- 診療所1件当たりの人数は、区全体の平均で、駅周辺の競合数ではありません。
e-Statでは、地域コードの体系も表によって違います。国勢調査と経済センサスの表では、新宿区の地域コードが13104で、国勢調査の墨田区は13107です。医療施設調査は独自の地域コードで、東京都が14です。こうした癖は、Skillに書いて、同じ失敗を繰り返さないようにしています。
使う側が数字と出典を見て確かめる前提で、この仕組みは成り立っています。出典はサーバーの返答に付くので、確認はその場でできます。
e-Statで取れるものと、取れないもの
公的な統計で土台を作れる場面は多くあります。一方で、足りない領域もあります。
今回の確認で取れたもの
- 墨田区の人口、年齢構成、世帯構成、外国人の人数(令和7年国勢調査)
- 新宿区全体の人口(令和7年国勢調査)。市区町村までの人口は、MCPで引けました
- 新宿区の昼間人口、夜間人口、区外から通う通勤・通学者の数(2020年の国勢調査)
- 新宿区の歯科診療所数(経済センサス。2021年6月)
今回のMCPでは取れなかったもの、古い年までのもの
- 町丁目別の人口(国勢調査)。新宿区の住民基本台帳の公表資料で補いました
- 駅周辺の競合数と家賃(取れたのは区全体の診療所数まで。墨田区の例の回答には、競合の数も家賃も入っていません。競合の数は、経済センサスの事業所数で別に調べられます)
- 業界団体や民間調査会社が出す市場規模
- 業態別の最新の販売額、SNSの利用率(APIでは取れないか、古い年までです)
足りない数字を補うときの考え方
町丁目別の集計(小地域集計)は、国勢調査の集計体系に含まれています。今回のMCPでは出ませんでした。公表の状況は、e-Statで確認してください。
自治体が公表する住民基本台帳の人口は、国勢調査と調査日や定義が違います。足し引きせず、年と範囲を並べて書きます。民間の調査を捨てる必要はなく、足していく形が現実的です。公的な統計で骨組みを作り、自治体の資料や民間の調査で補い、前提を資料に書き添える。MCPが省けるのは、表を探して値を取る手間までです。
まとめ:数字はMCPで取り、出どころと前提は人が確かめる
e-Stat MCPをつなぐと、数字を取る作業が、Claudeとのチャットの中に収まりました。墨田区の例では、人口とデモグラフィックの取得から、向いている業態の見立てまで、e-Statの数字だけで進みました。西新宿の例では、昼間人口と診療所数が商圏の見立てに効いた一方、町丁目別の人口は取れず、自治体の資料で代わりを探しました。
見立てはClaudeの推定で、数字には出典と年があります。MCPには数字を取る作業を任せ、出どころと前提を確かめる作業は人が持つ、という分担で進めます。扱うデータは公開データに絞っています。取った数字は、広告の配信エリアの見直しに使います。同じ悩みがある方は、公開データだけを扱う小さなMCPから試してみてください。
よくある質問
Q.MCPとは何ですか?
A.AIアプリが外部のデータやツールにつながるための共通規格です。
Anthropic社が2024年11月に公開し、2025年12月にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈されました。MCPサーバーを用意すると、Claudeが統計表の検索や値の取得を会話の中で呼び出せます。
Q.MCPとAPIは何が違いますか?
A.APIは、人間の開発者がコードで呼び出す窓口で、サービスごとに仕様が違います。
MCPは、AIが外部のツールやデータを使うための共通の窓口です。MCPサーバーの内部では、各サービスのAPIを呼んでいます。
Q.MCPとRAGは何が違いますか?
A.RAGは、回答を作るときに、文書のデータベースから関連する情報を探して参照する手法です。
MCPは、AIが外部のツールやデータに接続するための規格で、データの読み取りに加えて、操作の実行も含みます。両者は組み合わせて使えます。
Q.MCPは無料で使えますか?
A.規格そのものは公開されていて、利用に費用はかかりません。
Claudeなどのアプリの利用料と、自作したサーバーを動かす場所の費用は、別にかかります。
Q.Skillとは何ですか?
A.AIに特定の作業の手順や知識を教えておく、フォルダ単位の指示書です。
2025年12月に公開された規格で、2026年10月にMCPと同じAAIFへ寄贈されました。MCPがデータを取りに行く手段なら、Skillは、取ってきたデータの扱い方を決めるものです。
Q.e-Stat MCPでは、何が引けますか?
A.国勢調査などの人口と、昼間人口・夜間人口が、市区町村まで取れました。
経済センサスの診療所数も取れています。町丁目別の人口は、今回のMCPでは取れず、自治体の公表資料で補いました。業界団体や民間調査会社の市場規模は取れません。
Q.チャットだけで、商圏の分析はできますか?
A.公的なデータの取得と、生成AIによる見立て(商圏の絞り込み、出店に向く業態の候補)までは、チャットの中で進められました。
ただし、Claudeが示した内容は推定で、競合の数や家賃は入っていません。商圏の確定には、実際の患者の住所などのデータが要ります。数字の出典と年は、人が確かめます。
Q.新規出店の検討にも使えますか?
A.墨田区の例では、人口、年齢構成、世帯構成を取り、向いている業態の候補まで、Claudeが挙げました。
ただし、競合の数、家賃、駅からの動線は、別に確かめる必要があります。
Q.e-Statにないデータは、どうなりますか?
A.今回の例では、町丁目別の人口が、MCPではe-Statから出ませんでした。
Claudeは、新宿区が公表している住民基本台帳の数字で、代わりに答えました。調査日や定義が違うため、国勢調査の数字とは足し引きせず、出典と年を人が確かめて使います。
Q.MCPをつなげずに、普通にClaudeへ人口を聞くと、e-Statのデータは使われますか?
A.使われるとは限りません。
学習した知識から出典のない概数で答えるか、Web検索で見つかったページを出典にします。e-Statの統計表が拾われるのは、調査名まで指定したときが中心です。年齢や世帯類型などの細かい数字は、検索だけでは出ないことがあります。例えば「墨田区の人口は」と聞くと、墨田区の報道発表(住民基本台帳)を出典に、約29万人と答えました。国勢調査の285,038人とは、調査の種類と時点が違います。MCPなら、統計表と調査時点が決まり、e-StatのURLを出典に付けて返します。
Q.MCPを使わず、e-Statの画面で調べるのと、何が違いますか?
A.数字が1つで、1回きりなら、e-Statの画面で足ります。
繰り返し調べるときは、表の検索、年度の確認、Excelへの書き写しが、毎回かかります。MCPは、表の選択と値の取得を、Claudeとの会話の中で行い、統計名、調査時点、出典のURLを付けて返します。
Q.デジタル庁のダッシュボードでは、足りませんか?
A.自治体どうしの比較や、全体像の把握には向いています。
2025年12月から、市区町村ごとの約300指標も見られます。ただし、見られるのは、用意された指標の範囲です。必要な数字が指標にあるかを、先に確かめてください。MCPは、e-Statの統計表から、必要な数字を、会話の中で取ります。
Q.非エンジニアでもMCPサーバーは作れますか?
A.動くサーバーは作れました。
ただし、動くことと正しい数字が返ることは別なので、出典を見て確かめる運用が前提になります。
Q.e-StatのAPIは無料で使えますか?
A.費用はかかりません。
利用登録をして、アプリケーションIDを取得する必要があります。e-StatのAPI機能を使ったサービスを公開するときは、利用者が見られる場所にクレジット表示をお願いされます。
デジタルアスリート株式会社
経営企画部 エキスパート
2018年4月、デジタルアスリート株式会社(旧:株式会社リスティングプラス)へ入社
在籍9年目 キャリア初期からGoogle、MetaなどのWeb広告やLP制作、LPOに従事。
大手広告代理店への出向やマネジメント経験を経て現在は生成AIを活用した社内/外支援に従事。
経営企画部の一員として、生成AIを活用した生産性向上や顧客のマーケティング支援に勤しむ。
趣味は映画鑑賞、Manchester Unitedの試合観戦。好きな色は赤色。
Writer
関根諒亮 記事一覧
デジタルアスリート株式会社
経営企画部 エキスパート
2018年4月、デジタルアスリート株式会社(旧:株式会社リスティングプラス)へ入社
在籍9年目 キャリア初期からGoogle、MetaなどのWeb広告やLP制作、LPOに従事。
大手広告代理店への出向やマネジメント経験を経て現在は生成AIを活用した社内/外支援に従事。
経営企画部の一員として、生成AIを活用した生産性向上や顧客のマーケティング支援に勤しむ。
趣味は映画鑑賞、Manchester Unitedの試合観戦。好きな色は赤色。

