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購買心理とは、消費者が商品を認知し、興味を持ってから購入を決め、利用後の評価や共有に至るまでの一連のプロセスにおける、心理状態や意思決定のメカニズムのことです。
「良い商品のはずなのに、なぜか魅力が伝わらない…」
「WebサイトやSNSでの発信が、なかなか売上に結びつかない…」
もしそう感じているなら、その原因は顧客心理を捉えきれていないことにあるかもしれません。
現代は、ただ情報を発信するだけではモノが売れない時代といわれています。
本記事では、顧客の心が動く「8段階のプロセス」や明日から使える代表的な心理効果を交えながら、顧客の「購買行動」を促す方法を解説します。
目次
そもそも購買心理とは?
購買心理とは顧客が購入に至るまでの一連の心の動きや意思決定のメカニズムを指します。
これは、単なる「好き嫌い」といった感情論や、「衝動買い」のような突発的な行動だけを分析するものではありません。
・なぜ顧客がその商品に興味を持ったのか。
・何を基準に他の商品と比較し、何が決め手となって購入を決断したのか。
・そして、購入後の生活でその商品をどう評価し、次の行動にどう繋がっていくのか。
このように、顧客が商品を認知してから購入後の未来まで続く、一連の「線」で繋がった心理プロセスの全体像を捉えることが「購買心理の理解」です。
心の動きのプロセスを理解することで、顧客に寄り添ったマーケティング施策を打ちやすくなります。
顧客の購買行動を促す8段階の心理プロセス
この8つのステップが、顧客の気持ちが「買いたい」へと動いていく具体的な流れです。各ステップについて、詳しく紹介します。
ステップ1:問題認知
すべての購買行動は、消費者が「もっとこうだったら良いのに」「なんだか不便だな」といった、自身の課題やニーズに気づくことから始まります。この段階ではまだ特定の商品を求めているわけではなく、漠然とした不満や欲求を抱いている状態です。
マーケターとしては、広告やWeb記事などを通じて、顧客自身も気づいていないような潜在的な課題を言語化し、「これは自分のことだ」と気づきを与えることが重要になります。
ステップ2:情報収集
課題を認識した消費者は、それを解決するための具体的な情報を探し始めます。「スマホ バッテリー長持ち 最新」といったキーワードで検索したり、信頼するインフルエンサーのSNS投稿をチェックしたりする段階です。
ここでは、SEO対策やSNSでの情報発信を通じて、自社の商品やサービスを顧客に発見してもらうことが課題になります。
ステップ3:比較・評価
集めた情報をもとに、見つけた複数の選択肢を天秤にかける段階です。「商品Aは安いけどレビューが少ない。商品Bは高いけど機能が良いな…」というように、価格、機能、品質、口コミなど、顧客自身の基準で各商品を評価します。
企業側は、他社製品との機能比較表や、実際に使っている人の「お客様の声」などを用意し、自社の優位性を分かりやすく伝え、顧客の判断をサポートする必要があります。
ステップ4:購買決定
比較検討を終え、「私にはこれがベストだ」と一つの商品に絞り込み、心の中で購入の意思を固める段階です。レストランでメニューを眺めた末に「よし、これにしよう!」と決めるような瞬間にあたります。
ECサイトであれば、商品がカートに入れられた状態に近いため、マーケターは関連商品をおすすめしたり、限定クーポンで最後の一押しをしたりして、購入の意思を確実なものにします。
ステップ5:購買行動
心で決めたことを、実際の行動に移す段階です。ECサイトの「注文を確定する」ボタンをクリックしたり、お店のレジに商品を持って行ったりする、物理的なアクションを指します。
ここでは、決済方法を分かりやすくしたり、住所入力の手間を省いたりするなど、顧客がストレスなく購入を完了できるようサポートし、面倒さによる離脱(カゴ落ち)を防ぐことが重要です。
ステップ6:利用・評価
購入した商品やサービスを実際に利用し、「期待以上に良い!」「思ったより普通かも…」と、自分の中で満足度を判断します。この個人的な体験が、後の行動を左右する重要な土台となります。
分かりやすいチュートリアルや手厚いカスタマーサポートを提供し、顧客の「買ってよかった!」という体験を後押しすることで、満足度を高めることができます。
ステップ7:共有・推奨
利用した結果、満足度が非常に高かった場合に、その感動を誰かに伝えたくなります。「この商品、すごく良いよ!」と友人に勧めたり、SNSやECサイトにレビューを投稿したりする、外向きのアクションが起こる段階です。
企業は「レビュー投稿者のみの限定キャンペーン」や「お友達紹介プログラム」などを用意し、良い口コミ(UGC)が自然に広がる仕組みを作ることが有効的です。
ステップ8:継続利用・ファン化
満足度の高い体験を通じて、その商品だけでなく、企業やブランドそのものに信頼と愛着が生まれる段階です。商品をリピート購入したり、「このメーカーの新製品なら間違いない」と同じ会社の別商品も買うようになる、「ファン」の状態を指します。
メルマガや会員限定コンテンツなどで顧客との長期的な関係を築き、LTV(顧客生涯価値)を高めていくことが最終的なゴールとなります。
購買心理学をマーケティングに活かす3つのメリット
ここまで、顧客の購買行動が8つの段階に分かれていることを紹介いたしました。
では、この購買心理学を理解し、マーケティングに活かすことで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的な3つのメリットを紹介します。
顧客の段階に合わせた、的確なアプローチができるようになる
購買心理のプロセスを理解していると、顧客がいまどの段階にいるのかを高い精度で推測できます。それにより、各顧客に合わせた最適なコミュニケーションを取ることが可能になります。
例えば、まだ「問題認知」の段階のお客様に、いきなり商品の購入を強く促しても心には響きません。この段階では、まず「実はこんなことで損をしていませんか?」と課題を提示し、自分ごと化してもらうことが重要です。
一方で、既に「比較・評価」の段階にいるお客様には、他社製品との比較表や導入事例を提示して、最後のひと押しをすることが効果的です。
このように、顧客の心理状態に合わせた情報提供を行うことで、無視されずにメッセージを届けることができます。
顧客が抱える不安を解消し、信頼関係を築ける
顧客は、商品を購入する際に必ず何らかの不安を抱えています。「買って失敗したらどうしよう」「自分に合わなかったら…」といった不安です。
購買心理を学ぶと、こうした顧客の不安を先回りして解消するアプローチが取れるようになります。
例えば、高価な商品であれば、購入後の手厚いサポート体制や簡単な返品・交換ポリシーを明記しておくことも一つの手です。あるいは、「よくあるご質問」ページで、品質に関する疑問に丁寧に答えておく、といった具合です。
このような顧客への配慮は、「この会社は私たちのことを分かってくれている」という安心感に繋がり、最終的に企業やブランドへの深い信頼関係を築く土台となります。
心理効果で説得力が増し、商品の魅力が正しく伝わる
同じ商品やサービスでも、伝え方ひとつでその魅力の伝わり方は大きく変わります。購買心理学は、人の心を自然に動かすスイッチがどこにあるのかを教えてくれます。
例えば、「お客様満足度95%」という実績(社会的証明)を示したり、「期間限定価格」といった言葉で今行動すべき理由(希少性)を伝えたりすることで、商品の価値をより効果的にアピールできます。
商品のスペックをただ羅列するのではなく、こうした心理効果を乗せて伝えることで、説明の説得力は格段に増すのです。
どのような心理効果があるのかは、次の章で詳しく紹介します。
購買行動の各段階で使える心理効果10選
ここでは、購買行動の各段階で特に有効な心理効果を10個、厳選してご紹介します。ご自身のマーケティング課題がどの段階にあるかを考えながら、使えそうなテクニックを探してみてください。
フェーズ | 心理効果 | 一言でいうと |
問題認知・情報収集 | ・カリギュラ効果 ・カクテルパーティー効果 |
・気づかせる。 ・振り向かせる。 |
比較・評価 | ・シャルパンティエ効果 ・松竹梅の法則 ・権威への服従原理 |
・魅力的に見せる。 ・選ばせる。 |
購買決定・行動 | ・バンドワゴン効果 ・スノップ効果 ・希少性の原理 |
・背中を押す。 ・決断させる。 |
購買後 | ・マッチングリスク意識の解消 ・返報性の原理 |
・安心させ、次へ繋げる。 |
【問題認知・情報収集】で使える心理効果
この段階では、まず顧客に「自分ごと」として課題を認識させ、自社の情報に注意を向けてもらうことが重要です。
カリギュラ効果
「してはいけない」といわれると、かえってその行為をやってみたくなる心理現象です。
この名前は、内容の過激さから一部地域で上映禁止になった際にかえって観客が殺到した映画「カリギュラ」に由来します。
マーケティングでは、「本気で〇〇したい方以外は見ないでください」のように、あえて対象者を絞ることで注意を引きつけ、コンテンツへ誘導する際に使われます。
カクテルパーティー効果
騒がしいパーティー会場でも、自分の名前や興味のあるキーワードは自然と耳に入ってくる現象のことです。
人は無意識に自分と関連性の高い情報を選択して認識します。
例えば、「痩せたい人のための青汁」というコピーより、「ダイエットに挫折した経験のある30代のあなたへ」と呼びかける方が、「自分のことだ」と強く認識され、注意を引くことができます。
【比較・評価】で使える心理効果
複数の選択肢の中から、自社の商品を選んでもらうための後押しをする段階です。
シャルパンティエ効果
同じ重さでも、見た目が大きい「綿」と小さい「鉄」では、鉄の方が重いと錯覚するように、人はイメージによって物の価値を判断します。
【実際の活用事例】
「オルニチン25mg含有」と成分量を伝えるよりも、「しじみ70個分」と表現する方が、体に良さそう、二日酔いに効きそう、という具体的なイメージが湧き、商品の魅力がより強く伝わります。
松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)
「松・竹・梅」のように3つの選択肢が提示されると、多くの人が無意識に真ん中の「竹」を選びやすいという心理傾向です。
この「ゴルディロックス効果」という名前は、イギリスの童話『ゴルディロックスと3びきのくま』に由来します。
物語の主人公ゴルディロックスが、3つのお粥の中から「熱すぎず、冷たすぎない、ちょうどいい」ものを選んだエピソードになぞらえて、人が極端な選択肢を避け、無意識に真ん中を選んでしまう心理がこう呼ばれるようになりました。
料金プランを3段階で用意し、最も売りたいプランを中間の価格帯に設定するのは、この法則の典型的な活用法です。
権威への服従原理
人は、専門家や社会的地位の高い人、権威のある機関の意見を信じやすい傾向があります。
「医師推奨」「〇〇大学と共同開発」「業界No.1」といった肩書きは、商品の信頼性を高め、顧客が選ぶ際の強力な判断材料となります。
【購買決定・行動】で使える心理効果
顧客の最後の迷いを断ち切り、購入へと導くためのテクニックです。
バンドワゴン効果
「多くの人が支持しているものには価値がある」と感じ、自分も同じ選択をしたくなる心理です。
「販売数〇〇個突破!」「お客様満足度95%」といった実績のほか、「芸能人〇〇さん愛用」といった宣伝文句も、この効果を狙った典型的な例です。
他者の評価を参考にすることで、自分の選択への不安を和らげたいという気持ちに働きかけます。
スノッブ効果
バンドワゴン効果とは逆に、「他人とは違う、特別なものを持ちたい」という欲求に訴えかける心理です。
「世界で限定100本」「会員限定モデル」のように希少性をアピールすることで、所有欲や自己顕示欲を刺激し、購買意欲を高めます。
希少性の原理
「限定」という言葉に弱いのは、希少性の原理が働くためです。
「期間限定」「在庫限り」「本日限定価格」など、時間や数量が限られていると「今手に入れないと損をする」という損失回避の心理が働き、人は行動を促されます。
【購買後のフェーズ】で使える心理効果
購入後の満足度を高め、次の行動(リピートや口コミ)へと繋げるための重要なアプローチです。
マッチングリスク意識の解消
「買って失敗したらどうしよう」という購入後の不安(マッチングリスク)を、事前に取り除いておくアプローチです。この不安は購入をためらわせる大きな要因となるため、解消することが非常に重要です。
【実際の活用事例】
誰しも聞いたことがあるであろう「無料お試しセット」は、「高価な化粧品を買って、もし自分の肌に合わなかったら…」という顧客の不安を解消するための、非常に効果的な手段といえます。これにより、顧客は金銭的リスクを感じることなく、安心して商品を試すことができます。
返報性の原理
人から何か良いことをしてもらうと、「お返しをしなければ申し訳ない」と感じる心理です。
手厚いカスタマーサポートや、購入後の丁寧なフォローメールなどは、顧客満足度を高めるだけでなく、この返報性の心理に働きかけます。
ポジティブな体験をした顧客は、「良いレビューを書こう」「友人に勧めよう」といった形で、お返しをしてくれる可能性が高まります。
まとめ
本記事では、顧客の購買行動を促すための購買心理について、8段階のプロセスと代表的な心理効果を中心に解説しました。
・購買心理とは、単なる感情ではなく、顧客が商品を認知してからファンになるまで続く、一連の「心のプロセス」です。
・顧客の心の動きは「8段階のプロセス」として体系的に理解でき、自社の顧客がどの段階にいるかを把握することが重要です。
・各プロセスで有効な心理効果を適切に活用することで、マーケティング施策の説得力を高め、顧客の行動を自然に促すことができます。
購買心理の理解は、テクニックへと走る前に立ち返るべきマーケティングの土台ともいえます。
ぜひ、この記事で得た知識を参考に、まずはご自身の顧客がどの段階にいるのかを想像してみてください。そして、小さなABテストからでも、一つ心理効果を取り入れてみてください!
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