あやうく、広告費をドブに捨てかけた話。

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安達裕哉

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気づいた。インターネット広告を自分でつかうのはめちゃムズだと。

前回、インターネット広告がマス広告を駆逐しつつある事実を書いた。


 
が、キレイ事や御託は、我々のような企業には不要だ。
広告を使う側となってみれば、「とにかく使ってみて、効果があるか」にしか興味はないのだから。

だが本当にインターネット広告は、誰でも少額、簡単に広告を打てるようになる「夢のツール」なのだろうか?

ということで、Googleの広告アカウントを開いてみる。
まず、Google広告のページにアクセスすると、以下のような案内が開く。

週に1回はアカウントを確認せよ、と。

オーケーGoogle。開始すると、まずは「キャンペーン」を開くように言われる。

キャンペーンページを開くと…

プラスボタンをクリックして、新しいキャンペーンを作れ、とな。
すると、「キャンペーンタイプを選択せよ」と指示が出る。

検索、ディスプレイ、ショッピング、動画、ユニバーサルアプリ…

ここで手が止まる。

んー、そもそも「キャンペーン」に関する説明がない。
タイプを選べ、と言われても……。ショッピングや動画はわかるとしても、検索?ディスプレイ? 何が違うのか。

そして、ディスプレイ広告の説明が特にひどい。

「Web全体に様々な種類の広告を配信します」

という説明。
確かに正しい説明なのだろうが、Googleには歩み寄りの精神がないようだ。

しかたなく、Google先生に「Google 広告 キャンペーンとは」と聞くと、

Oh……。

入札単価?広告グループ?
さらに新しい単語が出てきた。

調べれば調べるほど新しい単語が出てくるのは、まるで英英辞典だ。

端的に言えば、インターネット広告を自分でつかうのはめちゃムズだ。
まだまだ「素人さんお断り」の世界なのである。

ここまで来ると、ほとんどの人は「まあ、よくわからんけど、とりあえず広告を出してみよう」という気持ちになるだろう。

1ヶ月に10万、20万円くらいならまあ、いいだろう……と思えなくもない。

あなたは金をドブに捨てますか?

しかし、インターネット広告はそんな甘い考え方で成果が出るようなものではない。
「誰でも少額から始められる」ということは「競争が激しい」ということの裏返しなのだ。

例えば私は以前、インターネット広告の専門家に
「とりあえず1ヶ月くらいGoogleのリスティング広告やってみたいのだが、注意点はありますか?」
と聞いたことがある。

するとその方は、
「いやー、やめたほうがいいですよ。金をドブに捨てるだけですよ」
という。

マジですか。

「Googleの広告は、全く効果がないってことでしょうか?」

「いや、取れるときは取れます」

「では何故、やめたほうがいいと?」

「広告したいものが、『インターネット広告で売ることが可能な商材なのか』がわかってないからです」

「なるほど……。」

「あと、知名度も商品力も無い場合、インターネットで広告しても、特に売れません」

「……」

「単純に『webで広告しさえすれば、新しく販路が作れる』と思っている会社。結構多いんですよ。でもそんなに単純じゃない」

「でも、『実店舗で売れているから、インターネットでも売れるだろう』というのは自然では?」

「そんな事はありません。実店舗で集客できているからって、インターネットでも集客できるとは限りません。売り場を変えれば、お客さんの特性も変わります」

彼によれば、「インターネット広告でどれくらい売れますかね?」という質問をするお客さんは結構多いのだそうだ。

そんな時、彼は率直に「やってみないと、わかりません」と伝えるという。

インターネット広告は「テスト」が前提

しかし、おかしなことがある。

彼は「とりあえずやってみよう」という私に対して「金をドブに捨てるだけ」と言ったではないか。矛盾している。

「結局、やったほうが良いの?やらないほうが良いの?」
私は質問した。

彼は言った。
「だから、テストするんですよ」

彼が言うには、こうだ。

インターネット広告はテストが簡単にできる。だから大きなお金を突っ込む前に、少額で少しずつ「当たり」を探すのだ。

例えば、数日間だけ広告を出してみて、

・どの程度の費用がかかるかを見積もる
・どんなキーワードで探されているかを調べる
・狙っているキーワードにどの程度の検索回数があるかを調べる
・自社の広告キャッチコピーがどの程度受け入れられるかを調べる

 
と言った具合だ。

例えば、Google広告において、彼が勧める一つの方法はこうだ。

まず、Googleのリスティング広告で、誰もが思いつく、商品に直結するキーワードで取れるかを検証する。
取れればOK、めでたしめでたしだが、通常そんなにうまくは行かない。

取れない場合は
「そもそもGoogleで検索されない」
か、
「競合が強すぎて取れない」ということが考えられる。

例えば不動産。
江東区の豊洲付近で1LDKの物件を探している人は、Googleで部屋を探すだろうか?

おそらく、探さない。
Googleで検索するのは、「部屋探しサイト」であり、物件ではない。
だから、物件をGoogleで広告しても駄目なのだ。

あるいは本棚。
本棚を売り出す時、Googleでお客さんを集めようとすれば、他に広告を出している「ニトリ」「アマゾン」などの大手に勝たなければならない。
また、検索上位には「ベルメゾン」「ディノス」など、錚々たる面々が連なる。

無名の中小企業がまともにやり合うのは厳しいだろう。

だから、商品に直結するキーワードですぐに成果が出ない場合は、
「周辺のキーワード」で広告を出してみる。

例えば、本棚であれば、ズバリのキーワード「本棚」ではなく

「本棚 おしゃれ」
「本棚 すっきり」
「本 収納」

 
など、キーワードを組み合わせたり、「本」というキーワードを使ったりするなどの施策が必要だ。
とにかく、たくさんのキーワードを出して、問い合わせに結びついたを残していく、という運用になる。

Google広告でダメなら、Facebook広告という選択肢を

次に彼は、
「Google広告がだめなら、次はFacebook広告で実験する」という。

自分たちの商品が新規性の強いものであったり、そもそも検索回数そのものが少ないときには、Google広告は無力だ。

また、問い合わせをもらったあと、こっちから営業アクションをかけて行く必要のある商材は営業コストが高いので、Google広告は費用対効果が合わないケースが多い。

「Facebook広告の強みは、『ユーザーのリスト』を持っていれば、そのユーザーの属性に近い人々に勝手に広告を表示させてくれる点です」と彼はいう。

「ただし、彼らは検索して、情報を探しているわけではないので、「今すぐ欲しい」という人は少ないです。ですから、物販には向いていません。
逆に、メールアドレスを登録してもらったり、資料をダウンロードしてもらったり、見込み客集めにはFacebook広告が向いているし、費用対効果も合います。」

つまり、Googleのリスティング広告はより「緊急度が高い」顕在層に向けたもの。
Facebook広告は、「緊急度は低いけど、見込み客を集めたい」潜在層に向けたもの、という棲み分けがあるのだ。

なるほど。

一口に「インターネット広告」といっても、用途や顧客属性に合わせた使い方をしなければならない。
そして、何を使うべきか、という判断は「テスト」によって得られる。

この当たりの知見があるかどうかが、インターネット広告運用のプロと、素人を分けるところなのである。

(取材協力・監修:株式会社リスティングプラス


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Tinect株式会社 代表取締役
1975年東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事 。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上の ビジネスパーソンとともに仕事をする。
仕事、マネジメントに関する メディア『Books&Apps』を運営する一方で、企業の現場でコンサル ティング活動を行う。

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