【寄稿記事】マーケティング業務のアウトソーシング活用メリットとは?

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岩澤 雅裕

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アウトソーシング

少子高齢化による採用環境の悪化、社会保険料増加等の雇用負担の増加、高度な専門知識が求められる業務の増加は、コア業務以外をアウトソーシング化する『雇わない経営』を加速させています。

 マーケティング業界においても、このアウトソーシング化の流れは、今後更に加速していき、マーケティング業務を含めたBPO市場は拡大していくことが予測されます。

 今回は、マーケティング業務のアウトソーシング化が加速する背景と、アウトソーシング活用のメリット、企業がマーケティング業務をアウトソーシングする際のポイントについて解説します。

  マーケティング業務のアウトソーシング化が加速する背景

企業を取り巻く環境は、日々変化しています。

私は組織コンサルタントとして、大小様々な規模、業種業態の企業の経営者、管理者の方と接していますが、人の問題を抱えていない方はいらっしゃいません。

人の問題は、3つの点にまとめられます。

①採用環境悪化、②採用後の会社負担増、③人材の専門性の高まり

の3つです。

背景その①:採用環境の悪化

昨今は、少子高齢化による採用環境悪化が大きな問題となっています。その中でもマーケティング業界は人気の職種のようにも思える反面、IT人材の不足により深刻な人手不足になる業界だと言われています。

デジタルマーケティングに取り組む企業が増えた事により、転職媒体に求人を出せばマーケティング経験者が集まるという時代は終わりました。大手から中小企業までマーケティング経験人材の採用は強化しており求職者に対して様々なメリットを提示する時代になっています。 

働き方改革などの施策もあり、フルリモート希望やフレックス制度の導入など、求職者の求める条件も多様化しており、企業側は、求職者の求めることと自社が求職者に提供できることを合致させるためのWEB上でのコミュニケーションが求められ、採用業務が高度化しています。

少子高齢化による採用母集団の減少と採用にかかる求職者とのコミュニケーションや組織運営の高度化は、今後更に進み、採用環境の悪化は今後更に加速していくことでしょう。

背景その②:採用後の会社負担増

また、採用活動が上手くいき、社員が雇用できたとしても、企業の悩みは尽きません。

雇用にかかる会社負担としての社会保険料の増加も課題です。

少子高齢化とともに、社会保険の負担は、会社側、従業員側ともに増加することが想定されます。さらにデジタルマーケティングに取り組む人材は、SNSを使った情報収集や情報発信も多くなることから、SNS経由で他社のリクルート対象にもなりやすくなります。

経営者は、なんとかマーケティング人材を採用できても、以前と比べて、費用負担は増えますし、前述した他社からのリクルートをはねのけるだけの動機付けと魅力的な職場環境を用意しなければなりません。常に退職者が発生する懸念を抱えて業務を運用しなければならないのです。

加えて、昨今では、育児・介護にかかる従業員の休業も想定することが社会的に求められています。この点においても、経営者にとって、従業員を雇用することは今まで以上に負担感があるものへと変化しているのです。

背景その③:人材の専門性の高まり

企業を取り巻く環境の変化としてのIT技術の急速な進展は、各種業務に高度な専門性を要求します。

特に、ITツールと結び付きが強い業務領域である、マーケティング業務、採用業務、経理業務等については、ツールの進化が著しく、かつ、ツール活用が業務の生産性に影響を与える点において、採用後の継続的な学習機会の提供が求められます。

また、ノンコア業務において専門性の高い人材を採用できたとしても、ノンコア業務であるがゆえに、その人材を評価する基準が社内にないことが多く、評価と育成のサイクルを企業内で回していくことは困難です。経営陣もITリテラシーを向上しない限り、マーケティング人材を適切に評価できないのです。

このように採用環境の悪化、採用後の会社負担増もあいまって、人材の専門性の高まりは、ノンコア業務を、専門的知見を豊富にもつ外部企業にアウトソーシングする流れを加速することとなります。

アウトソーシング活用のメリットとは?

採用環境の悪化、採用後の会社負担増、人材の専門性の高まりは、一方で企業にとっての好機でもあります。

なぜなら、このような環境の変化は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング:企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託すること)市場の成長を促し、企業から見た場合、質の高いアウトソーサーの選択肢が増えることになるからです。

アウトソーシングを活用することのメリットは上述した3つの問題点と表裏一体のものです。

それは、①採用力強化、②固定費圧縮による経営の自由度向上、③専門性の高いサービスの活用、の3つになります。

メリットその1:採用力強化

ノンコア業務をアウトソーシングすることで、採用コストをコア業務の求人に集中させることができます。

加えて、コア業務は自社の理念と直結する業務になるため、会社の理念を強く推し出した採用活動を展開することで、自社の理念に合致した社員の採用活動が可能になり、これらのことは採用力の強化に繋がります。

メリットその2:固定費圧縮による経営の自由度向上

ノンコア業務をアウトソースすることで、ノンコア業務を変動費化することが可能です。

例えば、マーケティング関連業務をアウトソーシングする場合、マーケティングにかかるリソースを会社の経営状況に合わせて増減させることが可能です。

サービスの拡大成長局面においては、マーケティング関連業務を拡大させ、需給調整の局面では、マーケティング関連業務を一部縮小し、環境の変化に応じたコストコントロールが可能となり、経営の自由度が上がります。特にWeb広告の代理店を活用する場合は、広告費の20%が業務委託費としてかかりますが、広告予算の決定権は委託側にありますから、自社の都合で支払う費用を変更する事が出来るのです。

自社で専門業務を内製化する場合、専門性が高い高度人材を継続雇用する為に様々なコストが必要となり、環境の変化に応じた自由度の高いリソースの再配分が困難となるという問題をアウトソーシングでは解決可能です。

メリットその3:専門性の高いサービスの活用

高度な専門性をもった外部企業に社内業務をアウトソーシングすることで、専門性の高いサービスを活用することが可能となります。

自社では得られない最新の知見を自社のコア業務と連携させることで、自社のコア業務を更に強化することが可能ですし、アウトソーサーを介して他社の成功事例を共有することは、自社の更なる成長のきっかけとなります。

特に、AIの技術的進展に伴い、マーケティング分野は日々進化しています。高度な専門性をもったマーケティング分野のアウトソーサーの知見を自社の経営に取り込んでいくことは、経営数字に大きな影響を及ぼすことは間違いないでしょう。

マーケティング業務におけるアウトソーシング活用の際のポイント

経営者は、環境の変化を好機と捉え、アウトソーシングを活用することで、企業を更なる成長へと導いていくことが求められます。

では、アウトソーシングを活用する上での注意点はどのようなことがあるのでしょうか。

特に経営数字に影響があるマーケティング業務のアウトソーシングを前提に、ポイントを解説します。

ミーティングルールの設定

アウトソーサー候補企業と商談を重ね、アウトソーサーとの協業が合意され、契約を交わす段階で、ミーティングルールを明確に設定することが必要です。マーケティング業務のアウトソーシング業務の場合、月1回のミーティングよりも、月2回(隔週)もしくは週1回のミーティングを組むことが理想です。

経営数字に影響が強いマーケティング業務のアウトソーシングの場合、月1回のミーティングでは、進捗に問題があった際の対処が遅れます。

事前にミーティングの報告フォーマットを明確に設定した上で、1回あたり15分~30分程度の短い時間で、月2回以上の頻度の定例ミーティングをすることがお互いの成果に繋がります。

この時、ミーティング頻度にかかるルールの設定は、可能な限り、企業側からアウトソーサー側に提案する形で進めてください。ルールは、ルールを設定する側、設定される側という意識上の位置関係を両者間に構築します。

企業側がアウトソーサーに対してミーティングルールを設定することで、進捗に遅れがあった際の責任が企業側となり、企業側が自責で業務を進める意識が強まります。

『アウトソーシングしたが思ったように成果が上がらない』
『アウトソーサーから改善施策が上がってこない』
『アウトソーサーの動きが遅い』 

このようにアウトソーシングした業務の成果に不満をもつ企業がありますが、成果が上がらないのはアウトソーサー側だけの責任ではありません。発注している企業側が定例ミーティングのルールを事前に設定することで、定例ミーティングの中で、双方で課題を解決する関係を醸成しましょう。

企業側が設定したミーティングルールに基づき、双方で、よりよい成果に向けてPDCAサイクルを回す体制を構築することがマーケティング業務のアウトソーシングの際には第1のポイントとなります。

最終的なゴールの共有と短期ゴールの共有

アウトソーシングにかかるアウトソーサーとの契約時、求める成果を企業側から明確にすることは必須となります。また、上記ミーティングルールで決めた2週間後もしくは1週間後の次回ミーティング時の小さなゴールについても進捗を共有することで、成果に関する企業とアウトソーサーの認識のズレを小さくしていくことも重要です。

マーケティング業務の場合、当初想定した通りの成果が出ないことは企業側も理解する必要があります。マーケティングの成果は、ビジネスモデルや商品力と密接に結びついているためアウトソーサー側の実力不足だけが原因ではありません。

この理解の下、ミーティング期間に応じた短期のPDCAサイクルを両者で回しながら、最終的なゴールに向けて大きなPDCAサイクルをミーティングルールに基づき回していくことが、特に成果が求められるマーケティング業務のアウトソーシングの際には重要なポイントになります。

この際、前述したとおり、ミーティングルールとミーティングの報告フォーマットが双方にとって明確であることが前提です。

Win-Winな関係性の構築

マーケティング業務の場合、発注する企業の成功は、マーケティング業務を受託するアウトソーサーの更なる受注機会の拡大につながることが多いのではないでしょうか。発注する側、受託する側の役割を明確において双方に求める成果を追求する事がWinWinの関係性を構築する事に繋がります。

また発注する側、受託する側もともに企業成長はしていきますから、双方が求める成果を追求する関係を継続する事で、より強固なアウトソーシング体制を作り上げる事が出来るようになるはずです。

このように、自社の成功が、パートナーであるアウトソーサーの利益につながるような関係性を構築し、定例ミーティングを繰り返す中で、共通の大きな目標に向けて、短期の目標に対する進捗確認と改善を繰り返していくことが、双方にとって理想的な関係になります。

ミーティングルールを設定し、長期と短期のゴールを共有しながら、お互いにWin-Winな関係の下、ビジネスの成功に向かっていく状況を作ることがアウトソーシング活用のポイントとなります。

まとめ

環境の変化は、企業にとってマイナス面がある一方で、成長のための好機と捉えることも出来ます。

環境の変化によって、BPO市場が成長することは、アウトソーシング業務の質の向上に繋がり、企業がコア業務に特化することの好機となります。

一方で、ノンコア業務をアウトソーシング企業に任せただけでは、企業、アウトソーサー双方にとって、望む成果は得られません。

アウトソーシングを活用するためには、企業とアウトソーサーとのコミュニケーションの型を明確に構築し、型に則り、共通のゴールに向かうことで、両者がWin-Winな関係となることが求められます。

環境の変化を好機と捉え、経営数字に影響が強いマーケティング分野における高度な専門的知見を自社の経営に取り込みながら、共に成長できる関係性をマーケティング領域のアウトソーサーと構築することができるとすれば、マーケティング分野におけるアウトソーシングの活用は、企業にとって大きな武器になるのではないでしょうか。

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岩澤 雅裕 記事一覧

一橋大学経済学部を卒業後、金融機関で法人融資業務などを担当。その後、中堅中小企業向けのコンサルティング会社で役員として従事。資金調達や資金繰り支援、事業計画策定支援などを担当。2018年1月に識学に入社し、これまで61社、200名ほどのトレーニングに携わる。

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