ショート動画全盛の今、ヒルトンの10分動画がバズった理由

  • 2023.3.1
  • 3,308 Views

最近、海外でヒルトンホテルの 10 分にも及ぶ動画広告が話題になっていることをご存知ですか?

@hilton Unexpected & amazing things can happen when you stay, and we want you to stay with us for 10 minutes. Yup, we made a 10-minute TikTok AND we’re giving away 10M Hilton Honors Points + more. #HiltonStayFor10 #HiltonForTheStay ♬ Hilton’s 10-Minute Stay – Hilton

2月16日にTikTokで公開されたこの動画は、3 分を超える長い動画は「スキップされてしまう可能性が高い」と避けられる傾向にある中で、驚きの 1,600 万回再生を記録しています。

また再生回数が多いだけでなく、2023年3月1日時点で48万いいねと27,000件のコメントがつき、13,000回シェアされるなどユーザーからも高評価を得ています。

ショート動画全盛の今、どうしてあえて10分もの長い動画をユーザーが見て評価したのか考えてみます。

「長い動画は見てもらえない」という風潮があった

実は、TikTokに10 分もの動画をアップロードできることすら知らなかったのですが、2022年3月1日からは10分がアップロードできる動画の最長時間です。

ここ最近のマーケティング界隈では「動画は短ければ短いほどいい」「短い時間にどれだけ言いたいことを詰め込めるか」という考えが一般化しました。

TikTok自体がそのような流れの中で急成長してきた動画アプリです。
過去には、

  • TikTok の理想的なビデオの長さは 21 秒から 34 秒の間
  • TikTok ユーザーの 50% 近くが、1 分を超える動画はストレスがたまると回答
  • ユーザーの 3 分の 1 はオンラインで動画を 2 倍の速さで視聴している

という調査結果もあり、動画広告は情報を端的にまとめて短くすることが大事だと考えられるようになりました。

参考:TikTok Wants Longer Videos—Whether You Like It or Not

そのような流れの中にあって、今回の動画は10分という長い時間を、しかも会社のプロモーションであることを明らかにした上で、ユーザーに楽しく見てもらうことに成功したようです。

動画のコメント欄を見ると、「10分どころではなく何回も見てしまった」「もう4回見た」というようなコメントがたくさんあります。
それだけでなく「これを考えた人をを昇進させるべき!」みたいな絶賛の声まであります。よっぽど海外ユーザーの心をとらえたようです。

10分の動画が成功した理由とは

今回の動画は、動画中で「10 minutes on TikTok is like three years in the real world(Tiktok で 10 分と言ったら、現実世界で 3 年ぐらいだよ!)」という表現がある通り、ショート動画の流行りを逆手に取った広告だといえます。

この動画が成功したから「トレンドが長い動画に逆戻りしている」というわけではありません。
しかし、10 分間ユーザーを引きつけたその動画広告には、学ぶべき要素がたくさんあり、海外のマーケティング業界でもその分析が行われています。

前提として、この動画は海外の Tiktok マーケティングでよく耳にする、基本的なポイントをしっかり押さえている動画です。

  • Hook(動画の冒頭にて、キャッチーなコンテンツによりユーザーを惹き付ける)
  • UGC(実際のユーザーが発信しているユーザー生成コンテンツ風)
  • Authentic(情報過多の今、信頼のおける本当の情報を発信しているか)

ヒルトンホテル創設者の曽孫(元祖お騒がせセレブと言った方が分かる人が多いかも)のパリス・ヒルトンをオープニングでキャスティングするなど、タイムラインの中で手を止めさせて冒頭3秒で心をつかむ!というような点もよく考えられています。

そのような基本をカバーした上で、具体的には下記のような要因が、10分の動画をユーザーに最後まで視聴してもらえた理由だと考えられます。

成功の理由①動画がシームレスに展開していくこと

この動画では、同じテーマやテイストの映像が続くことはなく、20秒~1分程度で次々に違う場面が展開されます。

パリス・ヒルトンが出てきたと思ったら、ヒルトンホテルの宿泊客?や民泊利用者などさまざまな人物が登場し、TikTokでよく見るようなフィルターやエフェクトが使われます。

コンテンツも料理や音楽、ドラマ仕立てなどTikTokのよくあるコンテンツ風です。
その各コンテンツの中で、ヒルトンの優位性や展開しているブランドの紹介、どこそこのエッグベネディクトが美味しいなどのUGC的な内容、エアビーと比べてヒルトンがどれだけ優れているかというようなコントのような PRが盛り込まれています。

10分の動画というより、ユーザーがTikTokを見ている時の体験を1つの動画にまとめたようです。
スクロールしないだけで、ユーザーの体験としてはショート動画を次々に見ていく普段の体験と変わらず、よって飽きることもなかったと思われます。

成功の理由②メタ的な作り・皮肉な感じがうけた

動画の中では、TikTokや広告についてメタ的な発言や皮肉っぽい表現が使われています。

まず「10分間TikTokをみる人なんていない」という前提からスタートしますし、「TikTokにありがちなコンテンツ」を並べていることも、TikTok自体をおちょくっている感があります。

また、広告についても、「We don’t want ads on TikTok, people hate them(ユーザーは TikTok で広告なんて見たくない、広告は嫌われてる)」などと広告でありながら、その嫌われっぷりを逆手に取ってネタにしています。

このようなユーモアは、特に海外では受けると思います!
また広告でありながら「広告なんて見たくないよね」というユーザーと同じ立場に立つことで共感が得られ、広告に対する警戒心を解くなど親しみやすさを感じられたのではないでしょうか。

成功の理由③リワードがある

この動画は、10 分最後まで視聴すればヒルトンのポイントサービスが得られるという仕組みになっています。

このリワードについては冒頭で案内されますが、これが10 分という時間そのものが際立った理由だと考えられます。

単にリワードが欲しいから最後まで見る、という動機づけ以外に、10分という長い動画だからこそ、より「価値があるキャンペーンなんだろう」という期待感を高め、最後まで視聴する人を増やす効果があったのではないでしょうか。

動画は長さより「企画のアイデア」が重要

動画のコメントを見ていると、本当にユーザーが楽しんで見ていることがわかります。
「ヒルトンに泊まったけど良かったよ!」などのコメントをこの機会に書く人もいて、ヒルトンにとってはブランドイメージの向上に大きく貢献したでしょう。

確かに、今はショート動画が流行りではありますが、長尺だからといって見てもらえないということはありません。

しっかり見てもらうためには、長いか短いかより「企画のアイデア」が大事だということを再確認した事例でした。

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角谷 裕子

デジタルアスリート株式会社 コピーライター兼マーケター 2015年、デジタルアスリート株式会社(旧:株式会社リスティングプラス)に入社した専業コピーライター1号。 ランディングページのライティングや制作ディレクションを経て、現在は主に自社サイトやメディアの管理・運営、コンテンツ制作を担当している。

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