広告運用インハウスとは?インハウスの利点・課題・判断ポイントと導入手順まとめ

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大和田千尋

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Web広告運用において、外部の広告代理店に委託するのではなく、自社内で完結させる「インハウス化」が注目を集めています。代理店手数料の削減やノウハウの蓄積といった価値がある一方で、人材確保や体制整備といった壁も存在します。

本記事では、広告運用のインハウス化について、基礎知識から実践的なポイントまで詳しく解説していきます。

目次

広告運用のインハウス化とは何か

インハウス(In-house)とは、直訳すると「社内で」という意味で、Web広告運用においては、外部の広告代理店に委託せず、自社の社員が広告運用を行うことを指します。

従来、多くの企業がWeb広告の運用を広告代理店に外注してきましたが、近年では自社内で運用体制を構築する動きが加速しています。

インハウス化が注目される背景

インハウス化が注目されている背景には、ビジネス環境の変化と技術の進化があります。

デジタルマーケティングの重要性の高まり

デジタル化の進展により、Web広告はマーケティング施策の中核を担うようになりました。事業戦略と密接に連動する広告運用を自社でコントロールしたいというニーズが高まっています。

広告運用が単なる宣伝手段ではなく、事業成長のエンジンとしての役割を担うようになったのです。

引用:株式会社矢野経済研究所 デジタルマーケティング市場に関する調査を実施(2025年)

広告プラットフォームの進化

Google広告やMeta広告などの広告プラットフォームが使いやすくなり、専門的な知識がなくても一定レベルの運用が可能になりました。管理画面の改善や自動化機能の充実により、運用のハードルが下がっています。かつては専門家にしか扱えなかったツールが、誰でも使えるようになってきたのです。

費用対効果への意識の高まり

広告費が増加するにつれて、代理店手数料の負担も大きくなります。特に広告費が月100万円を超えてくると、手数料だけで月20万円以上かかるケースもあり、コスト構造の見直しへの関心が高まります。

スピード重視の市場環境

市場変化が激しい現代において、迅速な意思決定と施策実行が競争優位性を左右します。代理店を介さず自社で運用することで、朝決めたことを午後に実装するようなスピーディーな対応が可能になります。

インハウス化の3つの形態

インハウス化には、企業の状況や目的に応じて、大きく分けて3つの形態があります。

完全インハウス型 広告運用のすべてを自社内で完結させる形態です。戦略立案から日々の運用、分析、改善まで、一貫して自社の担当者が行います。最もコストを抑えられる一方で、高いスキルと体制整備が必要です。
ハイブリット型 基本的な運用は自社で行いつつ、専門的な領域や特定の業務を外部パートナーに委託する形態です。例えば、日々の運用は自社で行い、戦略立案やクリエイティブ制作は外部に依頼するといった方法があります。多くの企業がこの形態を採用しています。
コンサルティング併用型 運用は自社で行いながら、定期的に外部のコンサルタントからアドバイスを受ける形態です。自社の運用力を高めながら、専門家の知見も活用できるバランスの良い選択肢といえます。

広告運用インハウス化のメリット

インハウス化には多くのメリットがあります。ここでは主要な5つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

代理店手数料の削減

インハウス化の最も分かりやすいメリットがコスト削減です。

広告代理店に運用を委託する場合、一般的に広告費の20%程度の手数料が発生します。月間広告費が100万円であれば月20万円、年間で240万円のコストとなります。広告費が500万円の場合は年間1,200万円もの手数料を支払うことになるため広告主にとっては大きな出費です。

インハウス化すれば、この手数料分を削減できます。削減したコストを広告費に回せば、より多くのユーザーにリーチできますし、人材育成や新しいツールへの投資に充てることも可能です。

ただし、人件費や教育コスト、ツール利用料などの新たなコストは発生するため、総合的なコスト比較が重要です。

自社に知識やノウハウが蓄積される

インハウス化により、広告運用の知識やノウハウが自社の資産として蓄積されます。これは長期的に見て非常に大きな価値です。

代理店に運用を任せている場合、どのような仮説で施策を実行し、どんな結果になったのか、その詳細は代理店側に蓄積されます。担当者が変わったり代理店を切り替えたりすると、それまでの学習内容が失われてしまうリスクがあります。

一方、インハウス化すれば、成功事例も失敗事例も含めて、すべてのナレッジが社内に残ります。過去のデータや運用履歴を参照しながら、継続的に改善を重ねることができます。

また、蓄積されたノウハウは他のマーケティング施策にも応用でき、組織全体のマーケティング力向上につながります。

スピード感のある施策実施ができる

自社内で運用が完結するため、意思決定から実行までのスピードが格段に速くなります。

代理店を介する場合、施策の提案から承認、実装まで数日から数週間かかることも珍しくありません。定例会議の日程調整だけでも時間がかかることがあります。

インハウスであれば、朝のミーティングで決めた施策を午後には実装でき市場の変化や競合の動きに対して、即座に対応することが可能です。

特に、セールやキャンペーンなどのタイムリーな施策、トレンドに合わせた広告配信、急な予算変更などにおいて、このスピード感は大きな競争優位性となります。

自社の商品やサービスに基づく戦略/戦術実現ができる

自社の商品やサービスを最も深く理解しているのは、自社の社員です。この深い理解が、広告運用の精度を高めます。

代理店の担当者は複数のクライアントを抱えており、どうしても理解の深さには限界があります。商品の細かな特徴や、顧客のペインポイント、競合との差別化ポイントなどを完全に把握することは困難です。

インハウスの担当者であれば、日々の業務の中で商品やサービスに触れており、営業部門や開発部門とも密にコミュニケーションを取れます。この深い理解に基づいた広告戦略は、より効果的な訴求につながります。

また、新商品のローンチや機能追加などの情報もいち早くキャッチでき、タイムリーな広告展開が可能です。

ヒューマンエラーが生じにくい

複数の担当者を介すると、コミュニケーションミスや認識のズレが生じやすくなります。

代理店運用では、社内担当者から代理店の営業担当へ、さらに実際の運用担当者へと情報が伝達されます。この過程で、意図が正確に伝わらなかったり、重要な情報が抜け落ちたりするリスクがあります。

インハウスであれば、情報伝達の階層が減り、意思決定者と実行者が近い、あるいは同一となるため、ミスコミュニケーションによるエラーを大幅に削減できます。

また、広告アカウントへのアクセス権限も明確に管理でき、「誰が何を変更したか」の履歴の確認などの操作を自社でコントロールしやすくなるため、トラブルが発生した際の原因究明や対応も迅速に行えます。

広告運用インハウス化で直面する6つの壁

メリットが多いインハウス化ですが、同時に乗り越えるべき壁も存在します。これらを事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。

広告運用のスキルを持つ人材の確保が必要

インハウス化の最大の課題が、適切な人材の確保です。

効果的な広告運用には、広告プラットフォームの知識、データ分析スキル、マーケティング戦略の理解など、幅広いスキルセットが求められます。こうした専門人材を採用するには、相応の採用コストと時間がかかります。

特に地方企業や中小企業では、デジタルマーケティング人材の獲得競争が激しく、採用自体が困難なケースも少なくありません。

既存社員を育成する場合も、実践的なスキル習得には半年から1年以上の時間が必要となり、その間の学習コストや本来の業務との両立、機会損失なども考慮しなければなりません。

また、1名だけでは属人化のリスクがあり、最低でも2〜3名のチーム体制が望ましいですが、それだけの人材を確保・育成するハードルはさらに高くなります。

育成・評価体制の整備が必須

人材を確保した後も、継続的な育成と適切な評価の仕組みが必要です。

広告運用のスキルは常に進化しており、新しい機能やアルゴリズム変更への対応が求められます。プライバシー規制の変化や新しい広告フォーマットの登場など、キャッチアップすべき情報は絶えません。

社内に教育体制がない場合、担当者のスキルアップが停滞し、運用品質が低下するリスクがあります。代理店であれば社内研修や情報共有の仕組みがありますが、インハウス担当者は自ら学び続ける必要があります。

外部研修やオンライン学習プログラムの活用、業界カンファレンスへの参加など、学習機会の提供が必要です。しかし、これらには時間とコストがかかります。

また、広告運用の成果をどう評価するかも重要な課題です。短期的な成果(CPA,ROAS等)だけでなく、長期的な戦略実行や知識の蓄積といった側面も含めた評価基準を設ける必要があります。

適切な評価がなければ、優秀な人材のモチベーション低下や離職につながり、せっかく構築した体制が崩壊してしまう可能性があります。

媒体アップデートへの対応遅れリスク

デジタル広告の世界は変化が非常に速く、常に最新情報をキャッチアップする必要があります。

広告代理店は複数のクライアントを持ち、様々な業界の運用経験から得られる知見や、媒体の営業担当から直接得られる情報など、豊富な情報源を持っています。また、媒体の営業担当から直接情報を得られたり、認定パートナー向けの先行情報にアクセスできたりと、豊富な情報源を持っています。

一方、インハウス担当者は日々の運用に追われ、業界トレンドや新機能のリサーチに十分な時間を割けないことがあります。気づかないうちに効果的な新機能がリリースされていたり、重要なアルゴリズム変更を見逃したりするリスクがあります。

セミナーへの参加、業界メディアのチェック、コミュニティへの参加など、情報収集を担当者任せにせず、組織として仕組み化することが重要です。

市場や競合他社に関する情報が不足する

代理店は業界横断的な視点を持ち、競合分析や市場全体のトレンドを把握しています。

同じ業界の複数企業を担当することで、業界のベンチマークデータや成功事例を蓄積しており、「この業界では通常このくらいのCPAが平均的」といった相対的な評価が可能です。

インハウスでは自社のデータしか持たないため、自社の成果が業界水準と比べて良いのか悪いのか判断が難しくなります。狭い視野での最適化に陥り、より大きな改善機会を逃すリスクもあります。

業界レポートの活用や、他社事例の研究など、外部情報を積極的に取り入れる工夫が求められます。

代理店向けのプロダクトやツールへのアクセス制限がある

広告プラットフォームや関連ツールの中には、広告代理店にのみ提供される機能やサポートが存在します。

例えば、Google広告では認定パートナー向けの専用サポートや、ベータ版機能への優先アクセスなどが提供されています。大手代理店であれば、媒体の担当者から直接アドバイスを受けられることもあります。

また、一部の高度な分析ツールや運用自動化ツールは、代理店向けのプランしか用意されていない場合があります。

インハウス化する際は、こうした制限が自社の運用にどの程度影響するかを事前に確認しておくことが重要です。広告費の規模によっては、直接媒体と交渉することで一部の制限を解除できる場合もあります。

移行期のパフォーマンス変動のリスク

インハウス化への移行期間中は、一時的にパフォーマンスが低下する可能性があります。運用体制の変更、担当者の習熟度不足、これまでの運用ノウハウの引き継ぎ不足などが原因で、移行直後は成果が不安定になることがあります。特に、代理店から急に完全インハウスに切り替える場合、このリスクは高まります。

また、新しい担当者が試行錯誤する過程で、予期せぬ広告費の増加や、効果的だった施策の停止などが発生する可能性もあります。

こうしたリスクを最小限に抑えるため、移行には3〜6ヶ月程度の期間を見込み、段階的な移行計画を立てることが重要です。

インハウス化の最適タイミングを見極める5つのシグナル

インハウス化は万能な解決策ではありません。自社の状況に応じて、適切なタイミングで判断することが成功の鍵となります。

月間広告費が100万円を超えたとき

広告費の規模は、インハウス化を検討する重要な指標です。

月間広告費が100万円を超えると、代理店手数料だけで月20万円、年間240万円のコストが発生します。この規模になると、インハウス担当者を1名雇用するコストと比較して、経済的なメリットが見えてきます。

さらに広告費が300万円、500万円と増えていけば、インハウス化のコストメリットはより明確になります。複数名の専任チームを組成しても、代理店手数料よりコストを抑えられる可能性があります。

ただし、単純なコスト比較だけでなく、運用品質や成果への影響も含めた総合的な判断が必要です。

広告運用を任せられる人材が用意できたとき

インハウス化の成否を左右するのが人材です。

社内に適切なスキルを持つ人材がいる、または採用できる見込みがある場合は、インハウス化の好機といえます。例えば、デジタルマーケティング経験者の中途採用、広告代理店出身者のジョイン、既存社員の育成完了などが該当します。

逆に、人材の確保が困難な状況でインハウス化を急ぐと、運用品質の低下や担当者の負担増加につながります。

理想的には、代理店と並走しながら社内人材を育成し、十分なスキルが身についた段階で段階的にインハウス化を進める方法が推奨されます。

事業フェーズが成長初期から安定・拡大期に入ったとき

事業のフェーズによっても、インハウス化の適切なタイミングは変わります。

スタートアップや新規事業の立ち上げ期は、試行錯誤が多く、専門家の知見を活用できる代理店運用が効率的です。ビジネスモデルが確立していない段階では、柔軟に方向転換できる体制が重要です。

一方、商品やサービスが市場に受け入れられ、安定した成長軌道に乗ってきた段階では、インハウス化のメリットが大きくなります。運用の型が見えてきて、継続的な改善が中心となる段階では、自社での運用が効率的です。

さらに事業が拡大期に入り、広告費が大きく増加する局面では、コスト削減の観点からもインハウス化の価値が高まります。

自社内にWeb広告への知見やノウハウを蓄積したいと考えはじめたとき

戦略的な観点から、デジタルマーケティングを組織の核となる能力として育てたいと考える場合も、インハウス化のタイミングです。

Web広告が事業成長の重要なドライバーとなっている企業では、その運用ノウハウは競争優位の源泉となります。外部に依存し続けるのではなく、自社の強みとして内製化したいという戦略的判断があれば、積極的にインハウス化を進めるべきです。

特に、マーケティング組織を強化したい、将来的にデータドリブンな意思決定を組織文化にしたいといった長期ビジョンがある場合、早めにインハウス化に取り組むことで、組織全体のケイパビリティ向上につながります。

任せている広告代理店に不満がでてきたとき

現在の代理店との関係に課題を感じている場合も、インハウス化を検討する機会です。

よくある不満として、レスポンスが遅い、提案が画一的、成果が改善しない、レポートが形式的、コミュニケーションが取りづらいといった点が挙げられます。

ただし、不満があるからといって即座にインハウス化するのは危険です。まずは代理店を変更する選択肢も検討すべきですし、そもそも自社側のオーダーや期待値設定に問題がないかも振り返る必要があります。

代理店を変更しても同様の課題が続く場合や、複数の代理店で同じ問題に直面している場合は、インハウス化が根本的な解決策となる可能性が高まります。

インハウス化を成功に導く6つのポイント

インハウス化を成功に導くには、戦略的なアプローチが不可欠です。

現在の広告運用の課題を明確にする

インハウス化の目的を明確にするため、まず現状の課題を洗い出しましょう。

コストが高すぎるのか、スピードが遅いのか、戦略的な連携が取れていないのか、ノウハウが蓄積されないのか、課題によって最適な解決策は異なります。

例えば、単にコスト削減が目的であれば、代理店の変更や手数料交渉も選択肢になります。スピードが課題であれば、ハイブリッド型でコミュニケーション体制を改善する方法もあります。

課題を明確にすることで、インハウス化が本当に最適な解決策なのか、どの程度のインハウス化が必要なのかを適切に判断できます。

長期的な目標や戦略にどのように影響するかを考慮する

インハウス化は単なる運用体制の変更ではなく、事業戦略に関わる重要な意思決定です。

3年後、5年後の事業計画において、デジタルマーケティングがどのような役割を果たすのか、どこまで組織能力として内製化したいのかを考えます。

例えば、将来的にデータドリブンな組織への成長を目指すのであれば、早期からインハウス化に投資する価値があります。一方、コア事業が全く別にあり、Web広告は補助的な役割に過ぎないのであれば、完全インハウス化は過剰投資かもしれません。

経営層を巻き込んで、長期的な視点でインハウス化の位置づけを議論することが重要です。

広告運用で成果を出すために必要な要素を理解する

効果的な広告運用には、単なる管理画面の操作以上の要素が必要です。

市場理解、顧客理解、競合分析、データ分析、クリエイティブ開発、ランディングページ最適化、そして全体のマーケティング戦略との整合性など、多岐にわたる要素が関連しています。

インハウス化する際は、これらの要素をどこまで内製化し、どこを外部パートナーに依頼するのか、全体像を描くことが大切です。

すべてを自社で完結させる必要はありません。自社の強みを活かせる領域に集中し、弱い部分は専門家の力を借りる戦略的な判断が成功の鍵となります。

1つのチームで広告運用に取り組めるよう、組織体制を見直す

広告運用は単独では完結せず、関連部門との連携が不可欠です。

営業部門からの顧客フィードバック、商品開発部門からの新機能情報、カスタマーサポートからのよくある質問、経営層からの予算や戦略の方向性など、様々な情報をタイムリーに集約する必要があります。

理想的には、マーケティング部門内に広告運用チームを配置し、クリエイティブチーム、Web制作チーム、データ分析チームと密に連携できる体制を構築します。

また、定期的な部門横断ミーティングを設定し、情報共有をスムーズにする仕組みも重要です。組織のサイロ化を防ぎ、一体となって成果を追求できる環境を整えましょう。

最初から“自社完結”を目指さず、パートナーと連携して少しずつ内製化を進める

インハウス化は一気に進めるのではなく、段階的なアプローチが推奨されます。

例えば、第1フェーズでは代理店に運用を任せながら、定例会議に必ず参加し、運用の考え方を学びます。第2フェーズでは、日々の入札調整やレポート作成などの基本業務を自社で担当し始めます。第3フェーズで戦略立案も自社化し、代理店はコンサルティングのみに移行します。

このような段階的な移行により、リスクを最小限に抑えながら、着実にスキルを蓄積できます。

また、クリエイティブ制作や高度な分析など、専門性の高い領域は継続して外部パートナーと連携する「ハイブリッド型」を維持することで、効率と品質のバランスを保てます。

自社の事業・戦略に合わせて運用プランをカスタマイズする

画一的な運用方法をそのまま適用するのではなく、自社に最適化することがインハウス化の真価です。

自社の商品特性、顧客の購買サイクル、競合状況、予算規模などを踏まえて、独自の運用方針を確立します。例えば、BtoB企業であれば長期的なナーチャリングを重視した戦略、Eコマース企業であれば短期的なROIを重視した戦略など、事業特性に応じたアプローチが必要です。

また、繁忙期と閑散期で予算配分を柔軟に変更したり、新商品ローンチに合わせて集中的にプロモーションを展開したり、社内の誰よりも事業を理解している強みを活かした運用を実現しましょう。

失敗しないための3つの注意点

インハウス化を進める際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを押さえることで、失敗のリスクを大幅に減らせます。

起こり得るリスクを考える

インハウス化には様々なリスクが伴います。事前に想定し、対策を講じておくことが重要です。

人材リスク

育成した担当者が離職してしまう、採用が進まない、スキル不足で成果が出ないといったリスクがあります。対策として、複数名でのチーム体制構築、ドキュメント化による知識の組織化、適切な評価・報酬制度の整備などが考えられます。

パフォーマンスリスク

移行期間中の成果悪化や、ノウハウ不足による機会損失のリスクです。段階的な移行計画、十分な引き継ぎ期間の確保、初期の目標設定を保守的にするなどの対策が有効です。

コストリスク

人件費、ツール費用、教育コストなど、想定以上のコストがかかるリスクがあります。詳細な予算計画を立て、代理店手数料との比較を定期的に見直すことが大切です。

これらのリスクを経営層と共有し、許容範囲を事前に合意しておくことで、問題が発生した際にも冷静に対処できます。

ハイブリットを選択肢に入れる

完全インハウス化にこだわらず、ハイブリッド型を積極的に検討しましょう。

多くの企業にとって、すべてを内製化するよりも、自社の強みを活かせる領域に集中し、他は外部の専門家に任せる方が効率的です。

例えば、日々の運用は自社で行いながら、以下のような領域を外部パートナーと連携する方法があります。

  • クリエイティブ制作やデザイン
  • 高度なデータ分析や機械学習の活用
  • 新しい媒体への参入時のサポート
  • 定期的な戦略レビューとコンサルティング
  • 繁忙期の運用サポート

ハイブリッド型は、インハウス化のメリットを享受しながら、デメリットを最小限に抑える現実的なアプローチといえます。

陥りがちな失敗パターンを知る

インハウス化でよくある失敗パターンを把握し、回避することが成功への近道です。

NGパターン 注意点
準備不足での急な移行 十分な準備期間や引き継ぎなしに、突然インハウス化を開始すると、運用が混乱し成果が大きく低下します。少なくとも3〜6ヶ月の準備期間を設けましょう。
スキル不足の担当者への丸投げ 経験の浅い担当者に「とりあえずやってみて」と任せると、誤った設定や非効率な運用が続き、成果が出ません。適切な教育と、相談できる体制が必要です。
短期的な成果のみを評価  インハウス化初期は試行錯誤が必要です。短期的な成果だけで評価すると、担当者が萎縮し、チャレンジできなくなります。
孤立した運用体制  広告運用担当者が他部門から孤立していると、重要な情報が入らず、効果的な施策が打てません。組織全体での連携体制が不可欠です。
ノウハウの属人化 特定の担当者だけが知識を持ち、ドキュメント化されていないと、その人が離職した際に運用が破綻します。必ず複数名での体制とナレッジの共有を心がけましょう。

インハウス化を実現するためのステップ

インハウス化を成功させるには、計画的なステップを踏むことが重要です。

運用体制の設計

インハウス化の第一歩は、どのような体制で運用するかを設計することです。

人員計画 広告費の規模や運用する媒体数に応じて、必要な人数を決定します。月間広告費100〜300万円程度であれば1名、500万円を超えるなら2〜3名のチーム体制が一般的です。

各メンバーの役割も明確にします。戦略立案担当、日々の運用担当、分析担当など、得意領域に応じた役割分担が効率的です。

採用か育成か 即戦力となる経験者を採用するか、既存社員を育成するか、あるいはその両方を組み合わせるかを決定します。採用市場の状況や予算、緊急度に応じて判断しましょう。

外部パートナーとの関係 どの領域を内製化し、どこを外部に依頼するかを明確にします。完全移行までの移行期間の体制と、移行後の体制の両方を設計することが重要です。

ツールとシステム 必要な広告管理ツール、分析ツール、レポーティングツールなどを選定します。予算と機能のバランスを考慮しながら、最適なツールセットを構築します。

体制移行の準備

設計した体制を実現するための準備フェーズです。

人材の確保 採用活動を開始するか、育成対象者を選定します。採用の場合は、求人票の作成、面接プロセスの設計、オファー条件の決定などを進めます。育成の場合は、対象者との面談や、役割変更に伴う社内調整を行います。

教育プログラムの実施 外部研修への参加、オンライン学習プログラムの活用、代理店からのトレーニングセッションなど、体系的な教育を実施します。Google広告やMeta広告の認定資格取得なども、スキル習得の良い目標となります。

アカウント設計の見直し 現在の広告アカウント構成が、インハウス運用に適しているかを確認します。必要に応じて、キャンペーン構成の再設計や、命名規則の統一などを行います。

ドキュメント整備 運用マニュアル、入札ルール、レポートフォーマット、緊急時の対応フローなど、必要なドキュメントを整備します。代理店がこれまで使っていた資料やレポートも、可能な限り引き継ぎましょう。

テスト運用 代理店と並走しながら、一部の媒体やキャンペーンで試験的に自社運用を開始します。この期間で課題を洗い出し、本格移行前に解決しておきます。

インハウスへの移行

準備が整ったら、実際の移行を進めます。

段階的な権限移譲 すべてを一度に移行するのではなく、段階的に権限を移譲していきます。

  • ステップ1:閲覧権限の付与と学習(1〜2ヶ月)
  • ステップ2:代理店監督のもとでの部分的な運用開始(2〜3ヶ月)
  • ステップ3:主導権の移行、代理店はサポート役(2〜3ヶ月)
  • ステップ4:完全な自社運用、代理店はコンサルのみ(継続)

このような段階を踏むことで、リスクを最小限に抑えながらスムーズに移行できます。

定例ミーティングの設計 自社内での定例ミーティング、代理店を含めた引き継ぎミーティング、経営層への報告会など、必要なミーティング体制を構築します。

KPI設定と目標管理 インハウス化後の成果指標を明確にします。移行直後は保守的な目標設定とし、徐々に改善を目指す計画を立てます。

トラブルシューティング体制 問題が発生した際の相談先や、緊急時の連絡体制を整備します。特に移行初期は、代理店や外部コンサルタントにすぐ相談できる体制を維持することが重要です。

改善サイクルを回す

インハウス化は移行して終わりではありません。継続的な改善が成功の鍵です。

定期的なレビュー 週次、月次、四半期などのタイミングで、運用成果を振り返ります。目標達成度の確認、課題の洗い出し、次のアクションプランの策定を行います。

スキルアップの継続 新機能のキャッチアップ、業界トレンドの学習、外部セミナーへの参加など、継続的な学習機会を提供します。チーム内での勉強会も効果的です。

ベストプラクティスの共有 成功した施策や学んだノウハウを、ドキュメント化してチーム全体で共有します。失敗事例も含めて、組織の資産として蓄積していきます。

体制の最適化 運用しながら見えてきた課題に応じて、体制や役割分担を柔軟に見直します。必要に応じて人員の追加や、外部パートナーとの協力範囲の調整なども検討します。

新しいチャレンジ 安定した運用ができるようになったら、新しい媒体への参入や、高度な機能の活用など、次のステップに挑戦します。継続的な成長がモチベーション維持にもつながります。

まとめ

広告運用のインハウス化は、コスト削減やノウハウ蓄積といった大きなメリットがある一方で、人材確保や体制整備といった課題も伴う重要な意思決定です。

成功のポイントは、自社の状況を正確に把握し、適切なタイミングで、計画的に進めることです。完全インハウス化にこだわらず、ハイブリッド型も含めて、自社に最適な形を模索することが重要です。

デジタル広告の世界は常に進化しており、インハウス化もゴールではなくスタートです。自社の強みを活かしながら、外部の専門家とも適切に連携し、持続可能な運用体制を構築していきましょう。

インハウス化についてさらに詳しく知りたい方、実際の移行を検討されている方は、ぜひデジタルアスリートにご相談ください。豊富な支援実績をもとに、貴社に最適なインハウス化プランをご提案いたします。

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Writer

大和田千尋 記事一覧

デジタルアスリート株式会社
マーケセールス部
新卒入社した企業で飛び込み営業を経験。1人で出来る仕事の限界を知ったことでWeb集客に興味を持ち、デジタルアスリート株式会社(旧:株式会社リスティングプラス)へ入社。
セールス部の立上げメンバーとしてジョインし、約2年半をセールス職で従事。2019年に人事の立上げとして異動。100名ほどの社員を抱えるデジタルアスリート株式会社における人事責任者として採用、教育、評価制度設計、労務など人事全般に従事。現在はデジタルマーケティング人材のリスキリング支援と自社マーケティングを担当。

 

 

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