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【この記事の要点(3行まとめ)】
- ABS(Attributed Branded Searches/日本語名「ブランド関連検索」)とは、広告に接触したユーザーがその後Googleまたは YouTube で自社のブランド名を検索した数を計測する、Google広告の新しいコンバージョンアクションです。
- 2026年6月29日にGoogleが全世界での提供開始を発表しました。対象はYouTubeキャンペーンとデマンドジェネレーションキャンペーン。ルックバックは既定7日(1〜30日で変更可)で、現時点ではレポート専用のベータ機能です。
- コンバージョンとCPAを捨てる必要はありません。ABSは「置き換える指標」ではなく「足す指標」です。中小企業はまず獲得を優先しつつ、同じCPAならブランド検索を多く生んでいる広告を残す、という使い方から始めるのが現実的です。
Google広告のKPIといえば、コンバージョン数、CPA、ROAS、CTR。この4つで語られるのが当たり前でした。
そこに、Googleがもう1つの物差しを持ち込んできています。
ABS(Attributed Branded Searches)。日本語では「ブランド関連検索」と訳されている指標です。日本ではほとんど話題になっていませんが、2026年6月に全世界で使えるようになりました。
そして私は、これは単なる「レポート項目が1つ増えた話」では終わらないと見ています。生成AIに自社が引用されるかどうかと、指名検索の量が無関係ではないからです。
この記事では、ABSとは何か、何がどう変わるのか、そして企業規模別にどう付き合うべきかを解説します。
目次
ABS(ブランド関連検索)とは?広告接触後の指名検索を数える指標
ABS(Attributed Branded Searches)とは、広告を見たユーザーがその後にGoogleまたはYouTubeで自社のブランド名を検索した回数を、広告の成果として計測する指標です。Google広告の管理画面では「ブランド関連検索」という名前のコンバージョンアクションとして表示されます。
ポイントは、クリックしていなくてもカウントされるところにあります。YouTube広告を見て、リンクは踏まずにそのまま離脱したユーザーが、数日後に社名で検索する。これまでは追いようがなかったこの動きが、レポート上の数字として出てくるようになりました。

Googleは公式ブログで、Googleでのブランド検索が1件増えるごとに平均31ドル(約4,800円 ※1)の売上増が見込めるという数字を示しています。上流の投資を正当化しにくかったブランド広告に、金額の根拠を与えにいっている格好です。
| この数字の扱いには注意してください 31ドルという数値は、Googleの自社データとNielsen IQのオフライン売上データ(2023〜2025年)をもとに、米国の500社超を対象に算出されたものです。Googleは「平均」と表記していますが、脚注では中央値とされています。対象は米国のみで、日用消費財(CPG)に偏った構成です。日本の中小企業がそのまま自社に当てはめて売上予測に使える数字ではない、と考えておくのが安全です。 |
※1 1ドル=155円換算(2026年8月時点)
日本でほとんど話題になっていない、3つの理由
これだけの指標が、日本ではほぼバズっていません。理由は3つあると考えています。
1. 「ABS」という略語が流通していない
日本語では「ブランド関連検索」と訳されています。訳語としては正確なのですが、そのぶん普通の言葉に見えてしまい、バズワードになりませんでした。海外では「ABS」という3文字で語られているのに、日本ではその3文字が定着していない。この差は小さくありません。
2. 直近までクローズドな機能だった
ABSはもともとGoogle Marketing Live 2025で発表されたレポート機能で、長らく限定提供でした。利用にはGoogleの営業担当への申請が必要で、誰でも触れる状態ではなかったのです。全世界での一般提供が発表されたのは2026年6月29日。まだ数か月しか経っていません。
3. レポート専用で、入札に使えない
これが実務上いちばん大きい理由でしょう。ABSは「すべてのコンバージョン」列と「効果」列に表示されますが、「コンバージョン」列には出てきません。つまり自動入札の最適化には使われないということです。運用者からすると「見えるようになったけど、で、どうするの?」という状態なので、関心が集まりにくい。
日本の広告市場が獲得型中心である以上、当然の反応だとも思います。ただ、だからこそ今のうちに理解しておく価値があるとも言えます。
これまでの広告評価と、何が変わるのか
これまで、認知系の広告の効果は「推測」でしか語れませんでした。
YouTube広告を出稿して、指名検索数が伸びた。だから広告が効いたはずです——このレポートを、代理店側は毎回苦労して作ってきました。私自身もそうです。相関があった月はいいのですが、指名検索が伸びなかった月には「これは広告のせいなのか、他の要因なのか」という問いに、誰も明確に答えられませんでした。
要因が多すぎて、答えようがなかった領域なんです。
ABSは、この曖昧さを縮めにきています。広告接触との紐付けをGoogle側が行い、公式の数字として管理画面に出す。「増えたはずです」が「増えました」に変わる。レポートを作る側にとっても、受け取る側にとっても、これは分かりやすい変化です。

一方で、これが明確になると困る立場もあります。認知広告を出稿し、指名検索への貢献を丁寧なレポートで説明してきた側からすれば、実測値が出ることで説明のしようがなくなるケースも当然出てくるはずです。健全なことだと私は思います。
押さえておくべき仕様
現時点(2026年8月)で公表されている主な仕様を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Attributed Branded Searches(日本語名:ブランド関連検索) |
| 全世界提供の開始 | 2026年6月29日(ベータ版) |
| 対象キャンペーン | YouTubeキャンペーン、デマンドジェネレーションキャンペーン |
| 計測される行動 | 広告接触後のGoogle/YouTube上でのブランド名検索 |
| 帰属方法 | ビュースルーを含むラストクリック帰属(最後に接触した広告に付与) |
| ルックバック | 既定7日(1〜30日の範囲で変更可) |
| 表示される場所 | 「目標」>「コンバージョン」>比較検討(Consideration)目標の配下 |
| 表示される列 | 「すべてのコンバージョン」「効果」(※「コンバージョン」列には出ない) |
| 入札への利用 | 不可(レポート専用) |
| 事前準備 | ブランドマッピングの設定(Googleの担当者側で実施) |
実務上いちばん引っかかりやすいのが、最後のブランドマッピングです。これが設定されていないと、いくら待ってもABSは計測されません。まずは自社の担当者、あるいは代理店経由でGoogleにブランドマッピングの設定を依頼するところからになります。
なお通常のコンバージョン設定のようにタグを追加する作業は発生しません。設定が済めば、あとは自動で計測が始まります。
ここからは私の見解です。なぜ今、指名検索なのか
ここからは、事実ではなく私の見立てを率直に述べます。
私がABSに注目している理由は、レポートが便利になるからではありません。指名検索の量が、生成AIに引用されるかどうかと無関係ではないと考えているからです。
AIに何かを尋ねたとき、SEOでは上位にいなかったはずの大手企業の名前が返ってくる場面が増えました。逆に、検索されていない・言及されていない商品は、おすすめとして挙がってきません。ブランドの認知度が、AIの回答に載るかどうかを左右する要素の1つになりつつあるのではないか——これが私の見立てです。
そう考えると、購買までの経路そのものが変わってきていることにも説明がつきます。

以前は、広告を見た人がSNSにわざわざ評判を見に行っていました。今はそこが生成AIの中で完結しつつあります。「この商品って大丈夫?」と聞き、返ってきた答えの中で口コミを確かめ、それから指名で検索する。ChatGPT広告が日本で始まったこともあり、この流れはさらに強まっていくのではないでしょうか。
だとすると、キャッチコピーの上手さだけで売れる時代ではなくなっていきます。AIのおすすめに載っておらず、広告だけが出てくる商品は、むしろ警戒されかねません。
| 広告でコンバージョンを取る、から、広告で指名検索を作る、へ。 |
そしてこれは、まったく新しい話ではありません。「詳しくは『デジタルアスリート』で検索」——テレビCMがやっていたことと構造は同じです。あの世界観が、AI経由の引用という新しい理由を得て戻ってきつつある。そう捉えると、腹落ちしやすいのではないかと思います。
もっとも、Googleの意図までは読み切れていません。AIに聞けば済むという流れの中で広告の必要性を守りにいっているのか、本当にブランド検索の重要性が増したと見ているのか。どちらの解釈も成り立ちます。ただ、どちらだとしても、広告の評価軸に指名検索が入ってくること自体は変わりません。
AIモード広告をめぐる動きと合わせて見ると、Googleが検索とAIの関係をどう再設計しようとしているかが見えてきます。
すべてが変わるわけではありません
ここは強調しておきたいところです。ABSが登場したからといって、明日から運用の作り直しが必要になるわけではありません。
変わらない領域
- 検索広告の獲得型運用。「今すぐ客」を刈り取る設計は今まで通りです
- CPA・ROASの重要性。むしろ資金体力に余裕のない企業ほど、ここは主役のままです
- 入札のロジック。ABSは入札に使われないので、自動入札の挙動は変わりません
- クリエイティブの基本。伝わらない広告は、指名検索も生みません
影響が出てくる領域
- YouTube・デマンドジェネレーションの評価方法。クリックとコンバージョンだけで判断しなくてよくなります
- 認知施策の社内説明。稟議や役員報告に載せられる数字が1つ増えます
- 出稿する広告の選び方。同条件なら、ブランド検索を生んでいる方を残す判断ができます
つまり、既存のKPIを捨てる話ではありません。足していく話です。まずはレポートで眺めるところから始めて、傾向が見えてきたら判断材料に組み込む。この順番で十分だと考えています。
企業規模で、付き合い方は変えるべき
Googleは「誰に向けた指標なのか」を明言していません。ただ、素直に読めば大手企業向けの話だと私は受け取りました。

大手・ブランド予算がある企業の場合
もともと認知広告を出稿しているのであれば、ABSはそのまま効果測定の武器になります。ブランドリフト調査のような別枠の実験を組まなくても、常時計測されるのが利点です。ABSを主要KPIの1つに据える判断も、この規模なら十分に成立します。
中小企業・獲得型で回している企業の場合
結論から言うと、まずはコンバージョンをそのまま狙ってください。
広告費10万円で認知目的の出稿をしたところで、指名検索が何百件も増えることは考えにくいですし、仮に10件増えたとして、それがAIの引用にどこまで効くかというと、正直なところ微々たるものではないでしょうか。AIに認識されるボリュームに届くには、ある程度の規模が必要だというのが私の感覚です。
中小企業にとっての正しい順番は、こうだと考えています。
- 広告単体で採算が合う状態をつくる
- その状態のまま出稿額を伸ばしていく
- 結果として増えたブランド検索を、ABSで確認する
- 同じCPAなら、ABSが多く出ている広告を残す
ブランド認知だけを目的にしてしまうと、認知される前に資金が尽きます。売上を追いながら、そのうえでどれだけブランド検索に繋がっているかを見る。この二本立てが現実解です。
YouTube広告のターゲティングを見直す際にも、この視点を持っておくと判断がしやすくなります。
今から着手できる3つのこと

最後に、実務として何から手をつけるかを整理します。
1. ブランドマッピングの設定を依頼する
計測の前提条件です。設定されていなければ数字は出ません。代理店に運用を任せている場合は、Googleへの依頼状況を確認しておきましょう。
2. 「あとで検索したくなる」見せ方になっているか見直す
ABSが増えるのは、広告を見た人が名前を覚えて帰った場合だけです。商品説明としては満点でも、社名や商品名が記憶に残らない構成では数字は動きません。動画の作り方そのものを、指名検索という出口から見直す価値があります。
3. 良い口コミが積み上がる売り方をする
見落とされがちですが、これがいちばん効いてくると私は考えています。
指名検索には、マイナスの検索も含まれます。「〇〇 怪しい」といった検索が増えるような売り方をしていれば、指名検索の数は増えても、AIに推奨される企業からは遠ざかっていくのではないでしょうか。売って終わりの設計ではなく、検索した先に良い評判が見つかる状態をつくる。地味ですが、ここを外すと他が効きません。
| 覚えておきたい順番 ブランド認知を先に取りにいくのではなく、売上を上げながらブランド検索も積み上がる売り方を選ぶ。この順番を逆にすると、多くの企業は体力が持ちません。 |
まとめ
ABS(ブランド関連検索)は、2026年6月29日に全世界での提供が始まった、広告接触後の指名検索を計測するGoogle広告の新指標です。現時点ではレポート専用のベータ機能で、入札には使えません。
ただ、Googleが指名検索を公式の評価軸に組み込んできた事実は、それ自体が方向性を示しています。生成AIに引用されるかどうかがビジネスに効いてくる局面で、広告の役割が「獲得」だけでは終わらなくなっていく。少なくともその可能性は、今から織り込んでおいて損はないはずです。
すぐに売上が変わる話ではありません。ですが、知っているか知らないかで、来期以降の戦略の組み方は変わってくると思います。
出典
- Google Ads & Commerce Blog「Unlock deeper insights for YouTube brand campaigns」(2026年6月29日)
- Google広告ヘルプ「ブランド関連検索の測定(ベータ版)」(2026年8月17日参照)
よくある質問
ABS(ブランド関連検索)とは何ですか?
広告に接触したユーザーが、その後GoogleまたはYouTubeで自社のブランド名を検索した回数を計測するGoogle広告の指標です。正式名称はAttributed Branded Searches。広告をクリックしていなくても、視聴・表示の後に発生したブランド検索がカウントされる点が従来のコンバージョンと大きく異なります。
いつから使えるようになりましたか?日本でも使えますか?
2026年6月29日にGoogleが全世界での提供開始を発表しました。日本を含むGoogle広告が提供されているすべての市場で利用できます。もともとはGoogle Marketing Live 2025で発表され、長らく限定提供でした。現時点ではベータ版という位置づけです。
どのキャンペーンタイプで使えますか?
YouTubeキャンペーンとデマンドジェネレーションキャンペーンが対象です。検索広告やP-MAXは現時点では対象外となっています。
使い始めるために必要な作業はありますか?
ブランドマッピングの設定が必要です。これはGoogleの担当者側で行う作業なので、自社の担当者または代理店経由で依頼してください。設定が完了すれば、コンバージョンページとキャンペーンレポートに自動で表示されるようになります。タグの追加など、広告主側での実装作業は発生しません。
ABSを自動入札の最適化に使えますか?
2026年8月時点では使えません。レポート専用の指標で、「すべてのコンバージョン」列と「効果」列には表示されますが、入札に使われる「コンバージョン」列には表示されません。比較検討(Consideration)目標の配下に置かれていますが、この目標をキャンペーンの最適化対象に設定することは現時点ではできません。
中小企業もABSを追うべきですか?
主軸はコンバージョンとCPAのままで問題ありません。少額の予算で認知だけを狙っても、AIの引用に影響するほどのブランド検索数には届きにくいためです。まず広告単体で採算が合う状態をつくり、出稿額を伸ばしていく。そのうえで、同じCPAならブランド検索を多く生んでいる広告を残す、という補助的な使い方から始めるのが現実的です。
(デジタルアスリート株式会社 代表取締役 長橋真吾)

デジタルアスリート株式会社 代表取締役社長/デジタルマーケティング協会 理事
1984年、長野県生まれ。
日本体育大学卒業後、コピーライター兼Web広告運用者としてキャリアをスタート。
2011年に株式会社リスティングプラス(現・デジタルアスリート株式会社)を設立し、代表取締役に就任。
Web広告とランディングページ制作を強みに事業を拡大し、
同社はこれまでに中小企業を中心として累計2,400社を超える企業のデジタルマーケティングを支援。
2022年1月にデジタルアスリート株式会社へ社名を変更し、
現在はマーケティングの上流設計から広告運用・人材育成までを一気通貫で支援する総合デジタルマーケティング企業として事業を展開している。
著書に『コンバージョン数を最大化する7つの極意』(学研プラス)、『DX時代の売れるしくみの作り方』(スタンダーズ)。初の著書はAmazonセールス・マーケティング部門で第1位を獲得。
各種SNSでも日々最新情報を発信。
・Youtube:アスリート社長のチーム経営学
・X(旧Twitter):長橋真吾|最新マーケティング×AI活用で内製化を支援!
Writer
長橋真吾 記事一覧
デジタルアスリート株式会社 代表取締役社長/デジタルマーケティング協会 理事
1984年、長野県生まれ。
日本体育大学卒業後、コピーライター兼Web広告運用者としてキャリアをスタート。
2011年に株式会社リスティングプラス(現・デジタルアスリート株式会社)を設立し、代表取締役に就任。
Web広告とランディングページ制作を強みに事業を拡大し、
同社はこれまでに中小企業を中心として累計2,400社を超える企業のデジタルマーケティングを支援。
2022年1月にデジタルアスリート株式会社へ社名を変更し、
現在はマーケティングの上流設計から広告運用・人材育成までを一気通貫で支援する総合デジタルマーケティング企業として事業を展開している。
著書に『コンバージョン数を最大化する7つの極意』(学研プラス)、『DX時代の売れるしくみの作り方』(スタンダーズ)。初の著書はAmazonセールス・マーケティング部門で第1位を獲得。
各種SNSでも日々最新情報を発信。
・Youtube:アスリート社長のチーム経営学
・X(旧Twitter):長橋真吾|最新マーケティング×AI活用で内製化を支援!